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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「モデル化」と「協働」で進んできた会津若松市のデジタル化(前編)【第26回】

会津若松市長 室井 照平 氏に聞く8年間の成果

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2020年3月26日

室井  その通りです。次に取り組み内容です。2012年頃はHEMS(Home Energy Management System)による「電力の見える化」や環境対応といった部分的な対応でした。2015年の施政方針演説以後は、健康・医療、教育、防災、交通などに幅を広げています。現在、会津若松市で進行中の取り組みの一例を紹介しましょう。

医療 :市民が自宅にいながらにして医師の診断を受けられる「オンライン診療」の取り組みがスタートしています。2015年に実施した「IoTヘルスケアプロジェクト(第7回参照)」に続くもので、「会津オンライン診療研究会」と連携しています。

農業 :ITを取り入れた「スマートアグリ」では、水田での水の管理の自動化や、土壌にセンサーを埋め込み最適な水分量と肥料を自動で与える養液土耕システムの導入を進めています。2020年度はドローンによる生育監視と肥料や農薬散布などにも取り組んでいます。

 スマートアグリでは明確な成果が出ています。あるイチゴ農家では、労働時間が5%減り、販売金額は292%向上しました。別のキュウリ農家では労働時間は11%削減、販売金額169%向上しているなどです。

教育 :家庭と学校をつなぐアプリケーションとしてとても評判が良い「あいづっこ+」や、IT活用教育のほか、市内の公立学校の身体測定や健康診断の結果をデータ化し、生徒と家族がアプリで確認することによる健康づくり支援を始めます。

 大学などでの研究利用に向けて、個人情報を暗号化・匿名化しオープンデータにすることも検討しています。データ提供にあたっては、保護者の承諾を事前にいただくオプトイン方式を採っています。

交通 :MaaS(Mobility as a Service)の取り組みを交通関係事業者と進めており、バス・鉄道・タクシーがシームレスに連携する利便性の向上を目指しています。地方都市は、運転免許を返納される高齢者が増える一方で、公共交通が十分といえない地域が多いという課題を抱えています。観光の誘客においても交通手段の確保は重要です。

防災 :河川氾濫を想定し、市民を安全に避難所へ誘導する仕組みの構築や、レジリエントな防災・減災機能の強化を目指した「災害時情報共有システム」など、市民に寄り添ったサービスの提供を検討しています。

 これらに加え会津若松市では、地域の「新たな仕事づくり」や「地域経済の活性化」にITをツール(道具)として活用しています。IT関連産業の集積を「新しい雇用機会の創出」として、「ICTオフィスビル スマートシティAiCT」を整備し企業誘致を進めています。

 このようにスマートシティのための基盤が充実してきました。「モデル都市」と呼ばれる自治体になってきたと、市民も市の職員も胸を張れると思います。

インターネットの黎明期にインド人エンジニアと起業

中村  ところで、初めてお会いしたときから、室井市長はITについて造詣が深いと感じていました。どのような背景からITの知識を得られたのでしょうか。

室井  地域まちづくりの取り組みに参加していた折、会津大学の2代目学長である野口 正一 先生にお会いする機会を得ました。その後、野口先生の紹介で、インドから来日していたエンジニアと一緒にシステム開発の会社を立ち上げたのです。41歳のときのことです。

中村  IT企業の創業者たったのですね。

室井  その頃は「Windows 95」が登場して間もない時期で、まさにインターネット普及の黎明期でした。メインフレーム上でJavaを使ったシステムを構築したり、ネットワーク監視・不正検知ツールなどを使ってセキュリティを強化したりといった案件を手がけていました。

中村  ダウンサイジングが始まり、PCサーバーの普及が急拡大した時代ですね。

室井  その通りです。サーバーのルーティングのレジストリを拾って図形化するエディターなどで「インターネット世界地図」などが作られていましたね。ネットワークを可視化した、その地図では、悪質な行為がサーバーを踏み台に実行されている状況が見られのだと理解しました。