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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「市民中心モデル」のスマートシティ実現における大学の役割(前編)【第28回】

会津大学 学長 兼 理事長・教授 宮崎 敏明 氏に聞く

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2020年5月21日

約9年間の会津若松市におけるスマートシティの取り組みにおいて、デジタル人材の育成は欠かせない要素の1つである。その人材育成の要が会津大学だ。会津大学がこの地にあるからこそ、会津若松市のスマートシティプロジェクトは走り続けられたといっても過言ではない。2020年4月に新学長に就任された宮崎 敏明 氏に、会津大学の「想い」や「ビジョン」を聞いた。(文中敬称略)

中村 彰二朗(以下、中村)  アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター長の中村 彰二朗です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で拡大する中、まずは、この未曽有の困難をどう乗り越えていくか、その後の社会をどう作っていくかが議論されています。その基盤は間違いなくデジタルです。

 スマートシティの構成要素であるICT(情報通信技術)を専門にする会津大学は、会津若松市のスマートシティプロジェクトにおける「最重要プレーヤー」の1人といえる存在です。「コンピュータ理工学専門」は日本で唯一かつ世界的にも珍しく、スーパーグローバル大学としても注目される教育・研究機関です。その会津大学に宮崎先生は2020年4月、新学長 兼 理事長に就任されました。

宮崎 敏明氏(以下、宮崎)  会津大学 新学長の宮崎 敏明です。会津大学も今、新型コロナウイルス問題の影響から立ち直るために奔走しています。1日も早く通常の大学運営に戻るべく、全学をあげて取り組んでいる最中です。また、会津若松市のスマートシティプロジェクトをより加速するためにも「大学だからこそ提供できる価値」を発揮していきたいと考えています。

写真1:公立大学法人 会津大学 学長 兼 理事長・教授の宮崎 敏明 氏

世界と連携し社会課題をICTで解決

中村  宮崎先生は企業と大学を行き来されるキャリアを経て、2005年からは会津大学教授としてコンピュータ理工学を指導して来られました。新学長として、どのようなビジョンを掲げておられますか?

写真2:アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター長 中村 彰二朗

宮崎  会津大学は1993年に建学し2020年で28年目を迎えます。ワールドワイドで知名度や認知度が向上しつつありますので、この流れをさらに伸ばしていくのが私の役割だと考えています。取り組んでいくテーマとしては大きく2つを掲げています。第1が研究力の強化、第2が国際化の推進です。

 研究力の強化では、本学に所属する先生方が「グループとしての研究力」をより強く発揮できるようにしていきます。同時に、社会的貢献度の大きいプロジェクトを実現するには多額のコストがかかりますので、研究の原資となる予算獲得などにも尽力します。

 国際化の推進では、世界に開いた大学として一層の国際協力を進めていきます。ICTは日本に閉じた技術ではありません。会津大学は教員の4割が外国人ということもあり、海外の研究者との連携には積極的でした。今後は、より一層、世界中の研究機関や専門家とのコラボレーションの充実を目指します。

 最優先事項は、本学を「優れた学生の集まる場」にすることです。海外の一流大学との提携による学生交流や共同研究を増やし、大学としての魅力をより高めることが重要だと考えています。ICTは社会課題の解決における鍵ですし、欧米やアジア各国と共通のテーマが数多くあります。そうした問題意識を共有されている先生方を、より広く招いていく予定です。