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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
決済アプリ「会津財布」のデータと市民IDをオープンAPIで連携【第31回】
TIS 執行役員ジェネラルマネージャー 音喜多 功 氏に聞く
会津若松市のICTオフィスビル「スマートシティAiCT」がオープンして1年が経つ。すでに23社が入居し、スマートシティに関する、さまざまなプロジェクトを進めている。今回から、AiCTの入居企業同士や地元企業とのコラボレーションにフォーカスし、どのようなスマートシティサービスが生まれているのかを紹介したい。まずは、第24回で紹介した会津若松市を実証フィールドとしたデジタルキャッシュについて、検証を担当するTISの執行役員である音喜多 功 氏に聞いた。(文中敬称略)
2020年7月17日に「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」が閣議決定された。危機に強い地域経済、強靱な経済構造の構築の必要性が示されるなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会の変化は着実に進んでおり、そこへの対策も動き出している。その中核になるのが、日本型スマートシティの確実な実現であろう。
会津若松のスマートシティ構想では、その戦略拠点の1つとしてICTオフィスビル「スマートシティAiCT」を開設している。オープンから1年、すでに日本の大手企業やグローバル企業など23社が入居し、入居企業同士や入居企業と地元企業のコラボレーションが生まれ、さまざまなプロジェクトを進めている。ここから、どんな日本型スマートシティのサービスが生まれてくるのだろうか。
今回から、AiCT入居企業のキーマンを訪ね、日本型スマートシティの「今」と「これから」に迫ってみたい。まずは、デジタルキャッシュの実証を進めるTISの執行役員、音喜多 功 氏にご登壇願った。
「地域主導・市民中心」のスマートシティにおけるウォレットアプリの姿
中村 彰二朗(以下、中村) アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF) センター共同統括の中村 彰二朗です。アクセンチュアは、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の「第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証研究」(SIP a-2)において、「スマートシティ分野:実証研究の実施」で実証研究事業を推進しました。
その際の共同事業者が、TIS、ARISE analytics、アスコエパートナーズの3社です。同事業でTISは、地域のID決済アプリケーション「会津財布(ウォレット)」を担当されました。
TISは、決済関連サービス分野で日本を代表する大手企業ですが、「地方創生」や「スマートシティ」について会社は、どのように位置付けていますか?
音喜多 功 氏(以下、音喜多) TIS 執行役員の音喜多 功です。サービス事業統括本部デジタルトランスフォーメーション営業企画ユニットのジェネラルマネージャーを務めています。
当社は中期経営計画(中計)において、「社会課題の解決」を経営アジェンダに取り入れました。同計画は2018年に始まり現在3年目です。
その中で、「社会や地域にTISが貢献できることは何か?」という観点から検討をスタートし、スマートシティへの取り組みを始めたわけです。当社の強みは、やはりキャッシュレス決済分野にあります。「この得意領域を使って地方創生に貢献するにはどうすれば良いだろうか」ということを中心に議論してきました。
中村 会津以外の地域でもスマートシティに取り組まれていますか?
音喜多 はい、会津若松での実証事業以外では、沖縄県でMaaS(Mobility as a Service)の取り組みを進めています。他の地域でも多くの方々と幅広い領域で議論し、TISが地方創生にどう貢献できるかを模索しています。