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ファストデータのRemote Data Acquisition(遠隔データ収集)【第2回】

坂元 淳一(アプトポッド代表取締役)
2017年12月28日

 特に、計測データ管理の自動化などデータ管理面において以下のようなメリットを得られる。

・膨大な計測データ整理の一元化
・サーバーでのデータの検索、切り出し処理
・サーバーでのデータの解析処理または解析前の加工処理
・サーバーでの自動計算処理
・サーバーでのリアルタイムなデータ監視とイベント処理
・データのサーバー共有

 ネットワークには、構内などLAN環境が利用な可能な場合はWi-Fiや有線LANを利用するが、モバイルネットワークが利用できる場合は、帯域によって伝送量に制限はあるものの、海外など遠隔地にある移動体のデータも即時性をもって収集できる。自動車などの計測はモバイルネットワークを利用することになる。

 総合的には、データ収集における効率を大幅に高め、データ解析までの時間とコストの大幅な削減に貢献する。サーバーにデータが到達した時点で即時処理ができるため、リアルタイムな計算処理や、しきい値判定処理、イベント処理などに活用できる。

遠隔データ収集におけるインターネット起因の課題

 メリットが大きい遠隔データ収集だが、越えなければならない課題や制約も多々ある。インターネットプロトコルを活用してデータをペイロードとして伝送するため、以下のような点を考慮しなければならない。

課題1:データの完全収集(欠損補完)
課題2:データの順番保証
課題3:タイムスタンプの統合
課題4:伝送帯域に対するペイロード設計

課題1:データの完全収集(欠損補完)

 インターネットには、そもそもデータを確実に伝送できるギャランティはない。UDP(User Datagram Protocol)など到達保証がないプロトコルを選択した場合はもとより、回線に起因するデータの欠損が発生する。特にモバイル回線を利用した場合、電波状態によっては帯域不足や回線不通に陥り、伝送データが欠損することになる。

 TCP((Transmission Control Protocol)などでは、帯域のロバストに対して、ある程度までの到達を保証できるが、極端な帯域不足下では処理不能になる。完全に回線不通に陥った場合は、もちろん大幅に欠損が発生する。

 こうした欠損に対する補完処理は、どのユースケースでも求められることが多い。欠損を補完するには、送信側と受信側、つまりエッジシステムとサーバーシステムの間で欠損データを管理し補完伝送を実行する仕組みが必要になる。

課題2:データの順番保証

 たとえば、データ伝送においてリアルタイム性を要する際にUDPを選択した場合など、プロトコルの特性上、データが届く順番に保証はない。欠損データを補完処理する場合は、過去のデータが最新データの後からサーバーに到達することになる。

 これらの事象下でデータの順番を保証してサーバーに格納するためには、データ本体に順番を付与してゲートウェイから送出し、受信したサーバー側でデータの順番を管理する必要がある。

課題3:タイムスタンプの統合

 CAN(Controller Area Network)などに代表される制御データや、アナログ/デジタルセンサーから発せられるデータの多くには、基本的にタイムスタンプという概念がない。これらのデータをハンドリングする際は原則としてゲートウェイ装置側でデータに時間を打刻する必要がある。

 さらに、複数の制御ネットワークやセンサーネットワークを統合して計測する場合は、すべての入力データに打刻する。秒単位などの緩い精度の要求であればサーバー側での受信時間で打刻することも可能だが、ミリ秒単位のファストデータのハンドリングで一定の精度要求を担保する場合は、このアプローチは不可能といえる。

課題4:伝送帯域に対するペイロード設計

 インターネットを介したデータ伝送では、当たり前ではあるが、伝送帯域のキャパシティを超えたデータは送れない。産業計測の場合、膨大なデータ伝送量が要求されるため、伝送するデータの取捨選択によるペイロード設計は不可欠だといえる。

 特にモバイルネットワークを利用する場合は、地域や時間などの要因によってネットワークが変動するため、帯域のロバストが激しい。前述の欠損処理も含めて帯域を想定し、伝送するペイロードを設計する必要がある。

 次回は、遠隔データ収集における課題解決のアプローチについて、もう少し深堀して解説する。

坂元 淳一(さかもと・じゅんいち)

アプトポッド代表取締役。大手外資系ソフトウェアベンダーのプロダクトマーケティングなどを経て2006年にアプトポッドを設立。コンサルティグ、ソフトウェア開発などを中心に、エネルギーやモビリティ、スマートシティなどの社会実証事業やPoCプロジェクトに従事。2013年よりM2M/IoTのファストデータ処理に特化したエンドツーエンドの汎用フレームワークとクラウドサービスを自社製品として提供を始め、自動車分野やロボティクス分野など、産業機械製品のコネクテッド化を推進する事業を展開している。