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“止まらない通信網”を活用し減災事業を推進【美波町IoT推進ラボ】

鍜治 淳也(美波町役場政策推進課 主査)
2018年11月30日

定期開催の津波避難訓練で効果を検証

 実証実験は今回、毎年定期的に開催されている津波避難訓練を選び、2017年11月に住民参加の下、実際の避難状況を確認した(写真3)。

写真3:定期的に開催されている津波避難訓練に合わせて実証実験を実施した

 避難訓練参加者のうち、タグビーコンを携帯してもらう参加者80人については、簡易的な身体測定も実施し、身体的特性を把握したうえで避難訓練に臨んでもらった。自宅から避難場所までの経路、その時間を明確できたほか、その際の移動情報(データ)も効率的に収集できた。

 この移動情報は、避難経路の整備計画の見直しに活用できる。以前は、避難時間などは個人的な計測に留まっており、データとしては収集できていなかった。そのため、避難計画なども、予め定められた避難時間などから予測した結果に過ぎず、実地に即していなかった。

 移動情報には、津波のシミュレーション結果を重ねられるため、住民に対して、視覚的に、よりリアルに訴求できる。避難行動が遅れた場合にどのようなことが起こるのかを時系列で示すなどである。

 実際、避難訓練後に避難状況と津波のシミュレーションシミュレーションを重ねた動画を見た住民の間では、避難に対する意識の向上が見られた。従来は、「地震発生から津波到達までの時間が、あまりにも短く、逃げることを諦めていた」という意見が多かった。

タグの携行や中継器への給電などの課題も明らかに

 今回、コンソーシアムに参加したIoT関連企業は、Skeed、サイファー・テック、あわえの3者。教育機関としては、徳島大学と、徳島文理大学、早稲田大学の3校が参加した。

 Skeedは早稲田大学と共に、コア技術に加え、各種機器類の製作、データを管理・分析するためのクラウドサーバーを担当。サイファー・テックは、携帯端末用アプリケーションを開発し、あわえが、住民へ周知するための広告作成や説明会などを補助した。

 徳島大学は、津波シミュレーションなど地震・津波の基礎情報を担当し、徳島文理大学が、避難対象者の身体特性調査や避難弱者向けサービスを検証した。

 実験の結果、個人を特定できる形での位置情報検出には難色を示す住民が少なくなかった。加えて、タグビーコン自体についても、きょう体が小さいとはいえ、これまで携行してこなかったモノを日常的に携行してもらうということもハードルが高い。

 止まらない通信網としては、設置地域の住居には波板トタンを使った外壁が多いことから、LPWAが使っている電波が波板トタンに当たって乱反射を起こし、想定していた通信距離が確保できないということも分かった。中継器の製作コストよりも、多数の中継器に電源を供給するための給電設備を含めた設置コストのほうが高いという課題も明らかになった。

 今後は、タグビーコンを日常的に携行してもらうための付加機能の追加を模索していく。通信網においては、水位計や水温計など、さまざまなセンサーとの連携も可能だ。通信モジュールを内蔵した防災灯の開発を県内業者と計画してもいる。

鍜治 淳也(かじ・じゅんや)

美波町役場政策推進課 主査