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ナスの収量予測でAIと人が初対決、データ駆動型園芸農業を推進【高知県IoT推進ラボ】

高知県農業技術センター研究員v.s.東京大学越塚研ラボAIエンジン

越塚 登、崔 鐘文(東京大学大学院)
2019年7月19日

土佐カツオなどのイメージが強い高知県は園芸農業も盛んだ。ナス、みょうが、ニラなどは全国1位の出荷量を誇る。その園芸農業を“データ駆動型”に変える取り組みの一環としてナスの出荷数予測プロジェクトを推進するのが高知県IoT推進ラボだ。2019年6月27日には、収穫量を予測するAI(人工知能)と、高知県農業技術センターの研究員による、「ナスの収量予測対決」を実施した。同対決を含め、高知県IoT推進ラボの取り組みを紹介する。

 坂本龍馬や土佐カツオなどで知られる高知県は、園芸農業が盛んな県でもある。ナス、ミョウガ、ニラなど全国シェア1位の出荷量を持つ品目も少なくない。たとえば2016年の市場シェアでは、ミョウガが87.1%、ショウガは44.4%、ニラは28.1%、ナスも15.8%を占める(写真1)。

写真1:高知県ではナスなど園芸農業が盛ん。写真は人とAIの予測対決に用いたナスの株

園芸農業先進国オランダとは生産量に5倍以上の違いが

 園芸農業は基本的に、ビニールハウス中で温湿度などの環境を管理し、自然環境下では出荷できない時期に出荷することで高い収益を上げる農業だ(写真2)。高知県の場合、東京圏や関西圏といった大きな市場から距離が離れたところに位置するために、普通に考えれば、輸送費だけで大きなデメリットを抱えていることになる。そのデメリットを園芸農業という技術によって克服している。

写真2:高知県農業技術センターの研究用ビニールハウス

 ただ日本の園芸農業はこれまで、冬場の温度管理に注力してきた。だが園芸農業先進国であるオランダでは、温湿度や日射量、二酸化炭素濃度も制御しながら、統合的な環境管理に基づく園芸農業を推進している。そのため、たとえばトマトという同じ作物を対象にした園芸農業でも、その生産量はオランダと日本では5倍以上の違いが生じていた。

 この差は、高知県の農業関係者も、にわかには信じられないデータだった。だがオランダを視察するなどにより徐々に状況がわかってきた。そこで“データ駆動型農業”の実現に向け、最先端のオランダ型ハウスの導入から始め、近年ではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)を園芸農業への独自の適用を試みるようになった。

 高知県は2016年、地方版IoT推進ラボに認定され、県庁内にもIoT推進室を設置しIoTの県内利用を推進してきた。特に、第1フェーズでは、県内にあって競争力が高い主要産業である農林水産業へのIoT適用に注力した。中でも園芸農業は、環境制御が特徴なだけにIoTやAIとの相性も良い。

 2018年度からは、「Next次世代型施設園芸農業」プロジェクトが産官学連携で始動した。中核は、高知県、高知大学、高知工科大学、高知県立大学などである。同プロジェクトでもIoT/AIを園芸農業に適用することが重要な課題の1つであり、高知県IoT推進ラボも強く連携している。