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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

テレワークで路面状況の可視化アプリを開発し道路の管理コスト削減へ【北見市IoT推進ラボ】

松田 淳一郎(要)、富山 和也(北見工業大学)、松本 武(北見市役所)
2019年6月21日

北海道の北東部に位置する北見市。オホーツク海に面する沿岸部から内陸部に広がる道内最大の面積を生かした農林水産業が盛んなほか、近年はカーリングの聖地としても知られる。2015年から取り組んできたテレワークの推進を背景に、地元と首都圏の産官学が連携し“稼ぐ力”を伸ばすためのプロジェクトが2018年8月にスタートした。同プロジェクトを推進する北見市IoT推進ラボの取り組みを紹介する。

 北見市は、北海道内で最大の面積を持ち、その広大さを活かした第1次産業が盛んな地域である。ホタテの水揚げ量のほか、たまねぎと白花豆の生産量においても日本一を誇る。夏期には気温が35℃にも高まり、冬期には逆にマイナス25℃近くまで冷え込みなど年間の寒暖差が60℃近くある地域でもある。

 寒冷地のため冬季スポーツが盛んだ。特に近年は、平昌冬季五輪のカーリングで日本初の銅メダルを獲得した女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」が本拠地を置き、優秀選手を輩出するなどカーリングの“聖地”としても知られる。最も冷え込む2月には、ご当地グルメである焼肉を極寒の野外で楽しむ「厳寒の焼き肉まつり」が開催され、多くの市民と観光客で賑わいを見せる。

写真1:北見市は、北海道最大の面積を生かした第1次産業に加え、カーリングや「厳寒の焼き肉まつり」などでも知られる

ICT産業で地域の“稼ぐ力”を高める

 その北見市では以前からICT関連産業の集積を目指している。首都圏からの企業誘致や、北見工業大学と連携したICT人材の育成などに取り組んできた。北見工大は、日本最北にある国立の理系単科大学だ。2015年度からは、地方創生施策として「ふるさとテレワーク推進事業」を実施し、サテライトオフィスの整備や、テレワーク環境のPR、地元でのICT人材育成などにも取り組んでいる。

 これらの成果として、東京拠点のICT企業3社が北見市にサテライトオフィスを開設し、ICTを活用した地方創生に向けた連携協定を結んでいる。最近では、それら進出企業と北見工大の共同研究や、地元民間企業とのビジネスマッチングが起こるなど、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などの技術を採り入れた新たなプロジェクトに挑戦しようという動きも見え始めている。

 そこで、これまでの実績をベースに、ICT企業のさらなる集積と、ICT産業による地域の“稼ぐ力”を高めるための推進組織として2018年9月に発足したのが北見市IoT推進ラボである。

 北見市IoT推進ラボが目指すのは、産官学が連携しICT産業の創出プロジェクトを展開することで、進出企業の定着を図り、北見市で働くICT人材の育成や集積を図る。それらにより、ビジネスマッチングによる付加価値の高い先端技術を使った独自製品の開発などを促す。

 対象になるのは、「ふるさとテレワーク推進事業」に参画してきたIT企業や、北見工大、公設の試験研究機関、地元企業など。彼らが北見工大の研究シーズや、それぞれが持つ技術や経験を持ち寄ることを期待する。

実施し切れてない道路の保守点検を解決課題に設定

 北見市IoT推進ラボの最初のプロジェクトは、ラボ認定に先立つ2018年8月にスタートした、道路の管理コスト削減に向けた取り組みだ。路面の凹凸を可視化するためのアプリケーションをテレワークを活用して開発する。

 市町村などの地方公共団体では、膨大な延長の道路を管理しており,路面を効果的かつ効率的に点検できる手法の開発が急務だとされる。道路そのものが老朽化しているほか、熟練技術者の高齢化や人手不足、さらには維持管理予算の縮減といった課題があるからだ。

 本プロジェクトでは、路面の凹凸を可視化するアプリによって、これら課題の解消を図る。従来、目視で点検してきた路面の凹凸状態をシステムによって可視化することで、点検業務の最適化を図る。システムは安価に導入・運用できるようにWebアプリケーションとして開発し、汎用的な端末から使用できるようにする。