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- 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト
里山に持続可能な新たなライフスタイルを創造する【白山市IoT推進ラボ】
データ分析に基づくソリューションの実証を繰り返し最適化
プロジェクトでは、持続可能な発展を可能にするエコシステムをデザインし、さまざまな人や組織の参画を求めながら、部分的なソリューションの実証実験を繰り返す。こうした流れを構築できるかどうかが、白山市IoT推進ラボには求められている。
新たな価値を創出するためのプロセスの中核に位置するのがデータ活用である。里山都市全体の物理的な情報をデザインリサーチやIoTなどによって収集。集まったデータをデータマイニングやAIで分析することで“あるべき姿”に向けたソリューションにつなげる。デザインリサーチとは、各地域のリソース(人・モノ・コト)の収集やインタビューのことである。
IoTによるデータ収集に向けたインフラ整備も進めている。データ収集プラットフォームのモックアップを作成したうえで、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークとなる「LoRa」規格の基地局設置や、一部地域における3D(3次元)点群データの整備、ドローンの都市プラットフォーム化を目指した地図作成などに取り組む(写真3)。
SDGsの文脈からも白山市の“あるべき姿”を明確にする
白山市の里山地域で起こっている課題を解決するには、より広範囲にリソースをとらえたエコシステムを構築できなければならない。狭い範囲でのリソースの組み合わせだけでは、トレードオフが解消できないからだ。プロジェクトに参画する企業のスタンスも、自社プロダクトの提案のみから、SDGsに代表される、経済と社会と環境が調和したソリューションの検討まで、さまざまだ。
技術面でも、データやAIの活用なども「合理化のためのツール」といった認識が強く、「価値を創造するためのツール」という認識は低い。産業界においてバックキャスティングによる思考を避けてきた影響が出ているのではないだろうか。その意味では、解決な困難な社会課題に向き合っているベンチャー企業との協業は効果的であると認識している。
幸いにも、過疎化が進む地域社会の方々は、プロジェクト推進に前向きである(写真4)。たとえば、鳥獣被害といった課題に対しても「我々も共存しているので一方的な被害という認識はない」といったコメントが返されるなど、経済重視ではえら得ないエコシステムの視点を与えてくれる。そして何よりも、それぞれの地域を守ってきたという誇りを持っている。
SDGs未来都市でも白山市としては、産業界での認識が高まりつつあるSDGsの文脈からも、白山市の“あるべき姿”をさらに明確にし、産官学民連携による学び・創造・実践のサイクルを繰り返していく。大小さまざまなイベントを仕掛けながら、2018年度に発足させるイノベーションプロジェクトを通じて、2020年までには具体的な成果を発信したいと考えている。
福田 崇之(ふくだ・たかゆき)
白山市IoT推進ラボ事務局(金沢工業大学 産学連携局)