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- 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト
里山に持続可能な新たなライフスタイルを創造する【白山市IoT推進ラボ】
石川県白山市は、日本三名山の1つ白山から日本海に向けて、山岳地域、里山地域、工業地域、そして住宅街などを有する。その中で里山地域における過疎化の進行は大きな課題だ。そこで、金沢工業大学と白山市が連携し、持続可能な新たな里山都市の創出に向けて動き出した。白山市IoT推進ラボの取り組みを紹介する。
石川県白山市は、2005年2月1日に1市2町5村が広域合併して誕生した、県内で最大の面積(754.93キロ平方メートル)を有する自治体である。金沢市に隣接し、日本三名山の1つである白山から日本海までが、一級河川の手取川によって結ばれている。流域に広がる扇状地を含む広大な市域は、豊富な自然と美しい景観に恵まれ、「SDGs(持続可能な開発目標)未来都市」にも選定されている(写真1)。
市南部の白山から日本海に向けては、山岳地域、里山地域、工業地域、住宅街などを続いている。石川県の経済や生活を支える白山の里山地域においても、全国同様に過疎化が進んでいることが大きな課題になっている。
目先の利益でなく持続可能な里山都市をデザイン
ただ過疎化に対しては、延命処置的な解決策では不十分だ。一般に、経済圏からみた里山地域の課題というとらえ方が浸透しており、里山地域独自の発展のあり方について議論がなされていないためである。結果、目先の利益を求める思考、いわゆる「フォアキャスティング」による取り組みばかりが繰り広げられ、過疎化の浸透を食い止められないのが実状だ。
こうした認識から、2017年6月に始動したのが白山市IoT推進ラボである。白山市と連携する金沢工業大学が事務局になり、IoTとデータサイエンスに基づく持続可能な里山都市の創出を目指す。2018年4月には、白山の里山地域に「白山麓キャンパス」を開設し、産官学民の連携によるイノベーションに取り組み始めた(写真2)。
白山市IoT推進ラボの特徴は、産官学民が世代や分野、文化の違いを超えて共創し、価値を創出するプロセスを重視している点にある。そのために「バックキャスティング」の手法を導入し、近未来の“あるべき姿”を明確にした“ビジョンドリブン”による新たな価値の創出に挑戦する。大学がファシリテーションを担うことで、既存の利害関係や経済中心の価値観とは異なる新たな価値をもたらし、市民が参画する形での実証実験を繰り返すことでビジョンを実現していく。
あるべき姿としては、「子供たちがクリエイティブに学び続ける里山ボーディングスクール都市を構築し、2030年に里山地域を教育先端都市へとアップデートする」というビジョンを掲げている。このビジョンをアイディアソンやハッカソンといった“場”を通じて産官学民が共有したうえで、学び・創造・実践を繰り返すイノベーションプロジェクト(産官学民連携)を複数立ち上げる。