• Column
  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

高校生が先端技術で地域のスマート農業を支える【士幌町IoT推進ラボ】

杉本 忠宏(北海道士幌高等学校 教頭)
2019年2月8日

地元先進農業の補完的なデータに

 e-kakashiは2016年に導入し、農業の見える化や、ドローンを活用した窒素肥料の見える化などに活用。そこで得られるデータに基づく各種の検証に継続して取り組んでいる。e-kakashiの機器類は現在、第2世代を導入しており、気象環境からハウスの自動管理に取り組んでいる。これは、北海道でも最も早いチャレンジになる。

 というのも、士幌町では、先に説明したように農業への先端技術の利用が進んでいることや、大規模な生産地帯であることから、e-kakashiが想定しているようなハウス環境などの制御や稲作は逆に、地元農家は取り組んでいない。そのため、e-kakashiの導入コストや、それに見合うだけの有効なデータが取得できるのかどうかについては、地元に対して十分に説明できているとは言い難いのが実状だ。

 ただ、衛星を用いた気象観測など広範囲をカバーするデータは取得できているものの、特定エリアなど狭い範囲からのデータは取得できていない。そうした新たなデータが、作物の生育にどの程度寄与するのかを検討したいと考えている(写真3)。また新規の特産品になるような作物における生育比較にも取り組んでいる。

写真3:学校近くの農場で大型トラクターで生産している様子

他地域とのラボと連携し農業関連データの共通化も

 士幌町IoT推進ラボにおけるe-kakashi導入は国内でも先駆的だったが、その後、スマート農業は大きな話題になり、e-kakashi同様に各種の農業関連データを取得・分析するサービスも多数登場してきた。しかし、いずれのサービスにおいても、重要なことは、IoTによって得られたデータを、どう実際の農作業に転化していけるかだろう。IoTの仕組みも、生産者にとってはコスト増につながるだけに、より作業者にフォーカスするという視点も需要になっている。

 一方で農業関連データは、全行程のデータを取得するのに半年、1年とかかり、データが蓄積される時間が長い。先行導入により積み上げてきたデータが活用できるのは、これからとの期待も大きい。その1つに生産予告への活用がある。これに向けては、e-kakashi以外の仕組みで取得したデータの活用も必要になるだけに、他地域のIoT推進ラボとも連携し、データの共通化を図りたい。

 士幌町IoT推進ラボは、高校を中心としたスマート農業の実証ほ場と、最新農業を学べる場として特色を生かし、当ラボで学んだ学生や社会人が地域の生産者を支えられるようになり、地域のデジタル化を後押ししたいと考えている。

杉本 忠宏(すぎもと・ただひろ)

北海道士幌高等学校 教頭