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商業施設丸ごとを実証環境に新規事業の開発を後押し【大阪市IoT推進ラボ】

手嶋 耕平、松出 晶子(ソフト産業プラザTEQS)
2019年3月8日

地方版IoTラボの第1弾で選定された29自治体の1つである大阪市IoT推進ラボ。同ラボが目指すのは、新規事業に乗り出すための自社製品/サービスの開発支援である。そのために、商業施設全体を実証実験環境として提供する「AIDORエクスペリメンテーション」に取り組んでいる。大阪市IoT推進ラボの取り組みを紹介する。

 たこ焼きのソースの臭いや、大阪城の姿、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)の賑わいなど、多様な顔を持つ大阪市。商業の街のイメージもあるものの、古くから、ものづくり企業が集積してきたほか、大学や研究機関も数多く立地している。ものづくり分野では、ロボットなど先進的な取り組みも進む。

写真1:たこ焼きから大阪城、ロボット、港湾部まで多彩な顔を持つ大阪市

 ただ、企業の大小を問わず、受託案件だけでは事業の先細りが見えてきているのも事実。そのため、新規事業として自社の製品/サービスの開発に取り組む企業が増えてきている。特に最近は時代の流れとして、製品/サービスのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)対応が不可避との認識が高まっており、多くの企業がIoTをキーワードにした新規事業開発に取り組んでいる。

 しかしIoTやロボットのビジネスは、従来のリソースやノウハウだけでは対応できず、これが新規事業開発の大きな障壁になっている。さらに、開発段階では実証実験によって製品/サービスを市場にフィットさせていくという過程が不可欠になる。

 こうした社会の流れと、大阪の企業を取り巻くビジネス環境を背景に、大阪市IoT推進ラボが発足し「ビジネス創出プログラム」を立ち上げ、事業創出に必要なリソースやノウハウの提供を開始。同プログラムの受講者などを対象に実証実験の支援策として「AIDORエクスペリメンテーション」を2017年4月から提供している。

オフィスから店舗、ホールや展示場など種々の環境がそろう

 AIDORエクスペリメンテーションの最大の特徴は、実証実験フィールドとして、大阪南港にある複合型商業施設「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」を“丸ごと”提供している点だ。

写真2:大阪南港にある複合型商業施設「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」の内部

 ATCには、オフィスだけでなく、ショップや飲食店、ホールや展示場、物流センターや警備施設などが、そろっている。IoTやロボットを手段として新事業を開発しようとすれば、その対象市場はあらゆる分野にわたる。それだけに、ATCであれば、どのようなサービスであっても検証できることになる。

 2018年度からは、大阪舞洲エリアにあるスポーツ施設(野球場、サッカー練習場、バスケットボール試合会場など)も実証実験フィールドとして提供し、スポーツ関連ビジネスのサービス開発もサポートしている。