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観光に並ぶIT産業をさらに発展させ沖縄の持続性を高める【沖縄県IoT推進ラボ】

川満 寿幸( 沖縄県 商工労働部 情報産業振興課 情報・金融産業振興班)
2019年3月22日

沖縄県IoT推進ラボ(略称ISCO:イスコ)は2018年7月に本格稼働した新しいIoT推進ラボの1つである。観光産業のイメージが強い沖縄県にあって、実は同産業に次ぐ規模を誇るのがIT産業だ。そのIT産業を成長させ、同時にITの活用を広げることで他産業の成長を図るのがISCOの狙いである。ISCOの取り組みを紹介する。

 沖縄県が位置するのは、東アジアの中心だ。アジア・太平洋地域の玄関口としての地理的特性に加え、独自の自然・文化・歴史が生み出すリゾート環境や魅力的なソフトパワーが人々を惹きつける。チャンプルー文化に代表される多様性を受け入れる社会環境と国内外に広がる人のネットワークを大きな強みになっている。

 こうした強みを背景に、沖縄県を訪れる観光客数は年々増加し、2017年度は958万人余り、うち外国人観光客が269万人余りと過去最高を記録した。また人口増加率も東京に次いで2番目に高く、年少人口の割合や平均年齢の若さは全国一である。少子高齢化が進む日本にあって、活気に満ちあふれた地域だといえる。

写真1:リゾート環境が人々を魅了する沖縄県

観光に次ぐ主要産業であるIT産業を提案型に変える

 沖縄県の産業としては観光のイメージが強い。その観光産業に次ぎ、年間売上高が4300億円を超える産業がある。IT産業だ。これまでの戦略的な施策などにより順調に成長してきた。

 しかし、第4次産業革命を迎えた今、テクノロジーの進展による産業構造や社会環境は世界規模で変化し始めている。この変化をとらえきれなければ、テクノロジーを糧にするIT産業はもとより、県内産業全体が大きな影響を受け、経済が停滞、あるいは縮小する恐れがある。

 沖縄県のIT産業は現時点では、売上高や立地企業数、雇用者数は増加傾向にある。ただし、継続的な成長に向けては、下請け中心の受注型ビジネスモデルからの脱却が不可欠だ。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの先進的技術革新に対応し、付加価値が高い情報通信技術/サービスを提供する提案型ビジネスモデルへ転換しなければならない。

 観光産業や製造業、農林水産業などの産業分野においても、サービスの多様化への対応や人材不足などの課題を抱えている。速いスピードで変化し続けるITイノベーションと向き合い、それらを活用した課題解決や新しい価値の創造を図ることが、持続的成長には必要である。

 こうした危機感から、2018年5月に設立されたのが「沖縄ITイノベーション戦略センター(略称ISCO)」であり、沖縄県IoT推進ラボ(愛称:IoTイノベーション推進ラボ)である。沖縄県や那覇市などの行政機関のほか、県内金融機関、IT企業、通信事業者など13の企業・団体が出資する。センター、ラボ共に愛称の「ISCO(イスコ)」で呼んでいる。

 産業支援機関としてのISCOは、次世代を見据えた沖縄の産業発展を展望するとともに、IT活用による県内産業全体の振興を図り、最終的には、全国平均の7割にとどまる県民所得の向上につなげるのが目的だ。ISCOの正会員・賛助会員・学術会員には2019年2月時点で128の企業・団体が参画しており、その数は拡大中である。

 2018年7月に本格稼働したISCOは“先端的な技術やアイデアを組み合わせるための場”に位置づけられている(図1)。

図1:IT産業と他産業のマッチングを図り新しいビジネス/サービスを生み出すのがISCOの役割