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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

IoT・AIの導入支援から新しいビジネスの創出支援にシフト【茨城県IoT推進ラボ】

掛札 真平(茨城県 産業戦略部技術振興局技術革新課 係長)
2019年4月19日

東京からおよそ35~160km圏に近接する茨城県。各種の研究機関や、ものづくり・素材産業などが東海、つくば、日立、鹿島といった4地区に集積している。一方で、中堅・中小企業のIoT(モノのインターネット)やロボットの活用には課題が少なくない。その課題解決に取り組むのが茨城県IoT推進ラボ。2019年4月には、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用した事業化を推進する「次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業」をスタートさせた。これまでの茨城県IoT推進ラボの取り組みを紹介する。

 茨城県は、関東地方の北東部に位置し、東京から電車で約1時間という近距離にある。そこには、豊かな自然や、観光地、伝統工芸品が数多く存在する。

 総延長190kmにも及ぶ海岸線や、貴重な植物が群生する筑波山、日本三名瀑の1つである袋田の滝、国内第2位の面積を誇る霞ヶ浦などが一例で、そうした自然の恵みを受けた、常陸秋そばや、あんこうといった旬の味も味わえる。

 観光地としては、日本遺産であり日本三名園の1つである水戸・偕楽園や、全国に約600社ある鹿島神社の総本社である鹿島神宮といった歴史ある施設がある(写真1)。日本一の高さ100mからのバンジージャンプが楽しめる竜神大吊橋や、ネモフィラで知られる国営ひたち海浜公園も人気だ。日本の絹織物の原点である「結城紬」や、作家の個性が光る「笠間焼」、繊細で優雅な彫刻が特徴の「真壁石燈籠」などの伝統工芸品も多い。

写真1:偕楽園は、日本遺産であり日本三名園の1つでもある

研究機関やものづくり・素材産業が各地区に集積

 その茨城県の可住地面積は全国第4位であり、県内には多くの研究機関や産業が集積する。たとえば、東海地区には大強度陽子加速器施設「J-PARC」など原子力関係の研究機関が、つくば地区には29もの研究・教育機関を含む最先端の科学技術が、それぞれ集積している。

 また、日立地区には日立製作所を中心とした高度な、ものづくりや情報サービス産業が、鹿島地区には鉄鋼・石油化学などの素材産業が集積。2018年の製造品出荷額等は全国第7位だった。さらに、高速道路や港、空港などの広域交通網や全国トップクラスの補助制度により、新たな成長分野を担う企業が、研究所や本社機能などを茨城県に移転するケースが増えている。

 ただ一方で、経済のグローバル化や製品ライフサイクルの短縮傾向などのビジネス環境の変化により、事業所数が1990年のピークから2016年には約半減するなど、中小企業は年々減少傾向にある(平成29年工業統計調査より)。加えて人口減少に伴う労働力不足や第4次産業革命が進展するなかで、中小企業には、テクノロジーを活用し、これまで以上に競争力を高めることが求められている。

 そのため中小企業の若手経営者たちは、海外流出や低コスト化などで縮小傾向にある事業の将来に危機感を持ち、収益改善を模索している。だが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)AI(人工知能)、ロボットなどに関する知識や新ビジネス創出のノウハウなどが不足しているのが実状だ。

 茨城県IoT推進ラボは、そんな茨城県にあって2016年7月、地方版IoT推進ラボの第1弾29地域の1つとしてスタートした。当時は、中小企業がロボットを導入しても「使い方が分からない」といった課題があったため、全国でもいち早く、自治体としてIoTやロボットなどの導入を支援しようとの考えから地方版IoT推進ラボに応募し、選定された。

アイデア創出から実証までをワンストップで支援

 その茨城県IoT推進ラボが2019年4月、新たにスタートさせたのが「次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業」である。新ビジネスの創出を目的に、アイデアの創出からビジネスプランの構築、さらには優れたビジネスプランの実証までをワンストップで支援する(図1)。

図1:「次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業」の流れ