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IoT共通プラットフォームを構築し持続的に成長する「スマートシティたかまつ」の実現へ【高松市IoT推進ラボ】

平井 賢太郎(高松市 総務局 ICT推進室長補佐)
2019年5月24日

産学民官の連携によってデータ利活用を促進

 高松市IoT推進ラボ(スマートシティたかまつ推進協議会)の意思決定機関は、年1回開催される総会と、3カ月に1回程度開かれる運営委員会である(写真3、表1)。ラボ自体には、表1にある企業や大学などのほかに、合計54企業/団体(2019年4月時点)が参加している。

写真3:スマートシティたかまつ推進協議会総会(2019年2月)
表1:高松市IoT推進ラボ(スマートシティたかまつ推進協議会)の運営委員会メンバー(2019年4月時点、氏名の50音順)
氏名所属
井上 泰一野村総合研究所 プリンシパル
片岡 郁雄香川大学 理事・副学長
田口 泰士STNet 取締役 営業本部副本部長
佃 昌道高松大学 学長
對馬 敬生百十四銀行 地域創生部長
徳永 秀和香川高等専門学校 機械電子工学科長
富田 規嗣四国電力 送配電カンパニー高松支社長
西川 宏幸NTT西日本 香川支店長
広瀬 一朗高松市 総務局参事
船田 晃NEC 四国支社長

 本ラボ(協議会)では現在、3つのワーキンググループ(WG)を設け、それぞれのテーマに取り組んでいる。

災害対応におけるIoT活用

 高松市(危機管理課)と香川大学を中心に、現状の水位・潮位センサーなどに加えて、収集・分析が必要なデータを検討するとともに、雨量や地形なども加味した将来予測を可能にすることで、迅速・的確な災害対応を実現する。

健康づくりの促進

 香川県の地域共通ポイントサービス「めぐりん」を運営するサイテックアイと高松市(関係課)を中心に、地域ポイントなどによる市民の健康づくりを促進するとともに、データ活用による効果を測定する。

観光情報の利活用

 いわゆる「観光MaaS(Mobility as a Service)」の実現を目指し、観光・交通情報の一元化に向けて必要なデータの検討や、関係者との調整を図る。

産学民官連携を深化させ周辺地域とも広域で連携へ

 最近では、全国どの地域・分野でも、産学民官連携の必要性が強調され、毎日のように多くの「協定」が結ばれている。ただ、実際に連携を具体化させようとすれば“言うは易く行うは難し”な面も少なくない。たとえば「産」はビジネスにならないと動けず、「学」は研究室ごとに独立しており、「官」も前例踏襲・縦割りの傾向が強い。こうした関係性も、本ラボ(協議会)を通じた日頃からの情報交換、WGでの取り組みやアイデアソンなどの取り組みを介して解消を図りたい。

 データそのものにも課題がある。「官」が持つデータの管理主体は担当課であるが、紙媒体でしか保存・把握できていないデータが多いうえ、オープンデータとして公開しても、負担のわりにはメリットが少ない。一方で「民」のデータはビジネスに直結するようなデータはなかなか公開されないのが実状である。これらを一元的なプラットフォームに載せる際のデータ変換のコスト負担も大きい。

 幸い、スマートシティたかまつプロジェクトでは、防災や観光、福祉など単一分野でのデータ活用は進みつつある。今後は、IoT共通プラットフォームを生かし、分野横断でのデータ活用を積極的に進めたいと考えている。

 加えて本ラボ(協議会)に参画する多様な主体と連携し、それぞれが有するICTとの連携も図り、複雑化・高度化する地域課題を解決するための新たなサービスの創出を目指す。

 さらに今後は、高松市内に留まらず、IoT共通プラットフォーム上での複数地域のデータ共有も検討している。19度からは、高松市と、さぬき市、東かがわ市、土庄町、小豆島町、三木町、直島町、綾川町の3市5町で形成する「瀬戸・高松広域連携中枢都市圏」において、関連事業に取り組んでいく計画だ。

平井 賢太郎(ひらい・けんたろう)

高松市 総務局 ICT推進室長補佐