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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

IoT共通プラットフォームを構築し持続的に成長する「スマートシティたかまつ」の実現へ【高松市IoT推進ラボ】

平井 賢太郎(高松市 総務局 ICT推進室長補佐)
2019年5月24日

香川県の中央に位置する高松市は、古くから四国の玄関口として繁栄してきた。瀬戸内海に面し、背後に讃岐山脈を頂くなど、都市機能と田園風景を併せ持つ“コンパクトシティ”である。その高松市が今、持続的な成長に向けた「スマートシティたかまつ」プロジェクトに取り組んでいる。2018年2月には欧州発の都市基盤用OSS(オープンソースソフトウェア)「FIWARE」を国内で初めて導入した。同プロジェクトを推進する高松市IoT推進ラボ(スマートシティたかまつ推進協議会)の取り組みを紹介する。

 高松市は、四国の北東部、香川県の中央に位置する。北には、小さな島々が点在する“多島美”を誇る瀬戸内海を臨み、南には讃岐山脈を頂く。豊かな自然環境を有する一方で、古くから四国の玄関口として、地方支分部局や企業の支店などが集積してきた。商店街が連なる便利な都市機能と、のどかな田園風景が調和する“コンパクト”なまちだ。

写真1:“多島美”を誇る瀬戸内海を臨む高松市

 そんな高松市にあっても、人口減少や少子超高齢化の流れとは無関係ではいられない。数年前から人口減少が始まっており、地域経済は今後、縮小していく。加えて社会インフラや社会保障への財政負担の増加や災害リスクの高まりなど、前例のない、さまざまな課題への対応が求められている。

 一方で、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(人工知能)など先進的なICT(情報通信技術)の利用が容易になってきている。にもかかわらず、予算の制約やICTに関する知識不足などから、それらを十分に活用できていないという状況もある。

 こうした状況を受けて、産学民官の連携によって2017年10月にスタートしたプロジェクトが「スマートシティたかまつ」だ。多様な主体との連携を通じ、ICTを使った地域課題の解決と地域経済の活性化を図ることを目的に、高松市長を会長とする「スマートシティたかまつ推進協議会」を設立し取り組んでいる。同協議会は2018年9月に「高松市IoT推進ラボ」にも選定された。

 2019年6 月1日には、スマートシティ実現に向けた望ましい産学官連携のあり方について考える「スマートシティたかまつシンポジウム2019」を開催する。スマートシティ先進市である会津若松市と加古川市とともに議論することになっている。

欧州発のスマートシティ用基盤「FIWARE」を国内で初めて導入

 高松市においては2016年4月、「G7香川・高松情報通信大臣会合」が開催された。これをきっかけに17年4月、市役所内に「ICT推進室」を設置し、ICTを活用したまちづくりである「スマートシティ」に向けた取り組みを開始した。官民に散在するリアルタイムデータを「IoT共通プラットフォーム(基盤)」上に集約し分野横断(クロスドメイン)的に利用することで、行政の効率化だけでなく、地域経済の活性化を実現するという将来像を目指している(図1)。

図1:IoT共通プラットフォームを基盤にスマートシティの実現を目指す

 そのために高松市は、IoT共通プラットフォームとして、欧州発の社会・公共分野向け基盤用ソフトウェア「FIWARE」を2018年2月、国内で初めて導入した。このプラットフォーム上で、さまざまな分野の官民データを分野横断的に収集・分析するとともに、市民に向けたオープンデータ化を推進する。

 FIWAREは、欧州の官民連携プロジェクトで開発されたソフトウェアだ。データ交換と、データ活用のそれぞれにオープンなAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)が定められているのが特徴である。そのAPIを利用することで種々のデータを分野やシステムを横断した流通と利用が可能になる。

 高松市のIoT共通プラットフォーム上にはすでに、防災分野では13カ所の水位センサーと潮位センサーからのデータが、観光分野では50台のレンタサイクルの移動履歴データが収集されている。前者はオープンデータ化され、誰もがリアルタイムデータを確認できる。

 行政においても、災害時の情報収集や意思決定が迅速になるとともに、観光客のニーズに応じた細やかな施策立案が可能になった(写真2)。18年度には、IoTによる高齢者見守りやドライブレコーダーの映像を活用した交通安全に関する実証実験を実施した。

写真2:災害対策本部におけるデータ活用の例