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ナスの収量予測でAIと人が初対決、データ駆動型園芸農業を推進【高知県IoT推進ラボ】

高知県農業技術センター研究員v.s.東京大学越塚研ラボAIエンジン

越塚 登、崔 鐘文(東京大学大学院)
2019年7月19日

 これらの条件のもとで、高知県農業技術センターの研究員の予測とAIエンジンの予測を比較した。結果は、6月21日、24日、26日の3日間の収穫量予測は、AIが20個、研究員が18個。これに対し実際の収穫量は21個だった(写真4)。若干ではあるが、対決結果としては「AIの勝ち」になった。

写真4:人とAIの対決で実際に収穫されたナス

 その後、これら数値について議論した。6月中旬から後半に、実験地域の日射量は普段よりも多く、かなり天気のよい状態が続いていた。従って、研究員の予測よりは、前倒しで収穫されることになり、収穫量が多めになったのではないかということだった。AIは日射量を天気予報からデータ化していたため、その分多めの予測値になっていたと考えられる。

 しかし現実には、その日射量予報よりも多くの日射になったために、さらに多くの収穫があったのではないかとまとめられた(写真5)。6月21日、24日、26日の三日間の収量の流れも、前倒しになっている傾向がみてとれた。

写真5:人とAIの予測結果と実際の収穫量のデータを比較・分析した

実際の農家が取得できるデータに基づく予測を可能に

 東京大学越塚研究室が、ナスの収量予測に取り組みはじめて約半年。それでも、農業技術センターのナスづくりの名人の予測と同程度、あるいは対決結果としては勝てたことは特筆に値すると思われる。研究員の長年の知見と、ほぼ同等の結果を半年で、しかもデータだけから得られたからだ。

 これまでの予測では、学習データも入力データも、県の農業技術センター特有のデータであり、花や実ごとに細密なデータが取れているという良さがあった。一方でデータのサンプル対象数が少ないという問題もある。実際の農家が取得できるデータに基づいて予測できる方式への改修が必要になる。そこでは、農家によるデータ取得を支援する技術も開発しなければならない。

 今後は、今回開発した手法の実用化を進めていくと同時に、他の作物への適用も検討していく。

越塚 登(こしづか・のぼる)

東京大学大学院 情報学環・副学環長・教授。1994年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。東京工業大学助手、東大人文社会系研究科助教授、同情報基盤センター助教授、情報学環・助教授・准教授を経て、2009年より同教授、2018年4月より同副学環長。2017年度より高知県IoT推進アドバイザーを務める。専門は計算機科学。特に、IoT(Internet of Things)やLinked Open Data、Operating System、Computer Network、Human Computer Interface、Block Chainなどの研究に取り組んでいる。

崔 鐘文(ちぇ・じょんむん)

東京大学大学院 学際情報学府 修士課程(越塚ラボ)。2012年韓国江陵高等学校卒業。卒業後、日韓共同理工系学部留学生に選抜され2018年筑波大学理工学群工学システム学類卒業。同年さまざまな課題の経験、解決のため東京大学大学院学際情報学府修士課程に進学。