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  • 本当にビジネスの役に立つSAP流デザインシンキングの勘所

企業レベルでデザインシンキングを定着させるには【第4回】

原 弘美(SAPジャパンソリューション統括本部イノベーションオフィス部長)
2019年3月6日

2つレベルのデザインシンキングを活用する

 そもそもデザインシンキングは、なぜ注目されたのでしょうか。それは、イノベーションを企業に持ち込む、イノベーション体質に生まれ変わる、という文脈で価値を発揮することが期待されたからでしょう。

 私は、デザインシンキングは2つのレベルで活用することにより本来的な効果が得られやすいと考えています。1つは、会議やワークショップにおける検討ツールとしての活用法。もう1つは、イノベーションの起きやすい環境を作るための共通言語としての活用法です。

 言語の習得と同様に、デザインシンキングもその基本を抑えられれば、経験を重ねるなかで自由に使いこなせるようになります。そのためには、デザインシンキングという“イノベーション言語”の習得プロセスを、基礎学習の機会、経験を重ねる機会、自分ごととして取り組むビジネステーマでの適用機会という段階に分けて設計し、プログラム化するのです。

 これを組織的に実行することにより、イノベーションの共通言語として組み込まれやすくなります。組織としての習熟度が向上してくれば、部門横断や職種横断での会議やワークショップが、よりスムーズに、より濃い密度で開催でき、散発的で効果が薄い適用の段階を脱することができるはずです。

 今回紹介したいくつか“現象”に既視感を覚える企業にとっては、デザインシンキング導入の再スタートは容易ではないかもしれません。ですが2つのレベルを意識して推進することにより、過去の苦い思い出と決別できるかもしれません。

 次回は、デザインシンキングを組織に定着させ、イノベーションにつなげていくための具体的な進め方について、例を通して紹介します。

原 弘美(はら・ひろみ)

SAPジャパンソリューション統括本部イノベーションオフィス部長。Hasso Plattner Institute D-School認定デザインシンキング・コーチ。SAPジャパンでは、ハイテク業界、食品消費財業界、製薬業界への製品展開、日本向け機能の開発、顧客提案支援などに従事。ビジネスプロセスマネージメントやマスタデータ管理などの顧客提案担当を経て、SAP が対外的にDesign Thinking with SAP を展開しはじめた2013 年より、SAPジャパンにおけるDesign Thinkingの展開、顧客提案における活用を推進。2016年よりSAPアジア・パシフィック地域Design Thinking with SAP リードも兼任。中央大学法学部卒業。