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「Society 5.0」への変革を実現するために自らも変革、CEATECが”Japan”を外した理由

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年3月13日

東京モーターショーとの連携なども検討中

 さらに20周年という点で2つの取り組みを計画しています。1つは、東京モーターショー(主催:日本自動車工業会)との連携です。2019年のCEATECの会期は10月15日~18日ですが、その翌週から東京ビッグサイトで「第46回東京モーターショー2019」が開催されます。自動走行やコネクテッドカーによって大きく変わろうとしているMobilityの領域を中心に、CEATECと東京モーターショーが相乗りできるのではないかと、日本自動車工業会と相談しているところです。

CEATEC実施協議会 エグゼクティブ・プロデューサーの鹿野 清 氏

 もう1つは、CEATECの源流とも言えるIoT家電/IoTデバイス分野の強化です。先にお話ししたように家電業界の競争力が低下したのは事実ですが、スマートホームの文脈では、IoT家電/IoTデバイスの位置付けは大きく変わってきました。スマートホームを具体的に提示するためには、家電などのIoT化が不可欠であり、従来の家電とは全く異なるデバイスに変化しようとしているからです。

 加えてスマートホームでは、IoT家電/IoTデバイスが、メーカーを問わず家庭内でつながる必要があります。技術的なバックグラウンドをもって、つながることを保証する認証制度といったことも考えています。

 そもそもCEATECの会場がある千葉市の幕張副都心地区は、近未来に向けた技術実証と多文化都市に向けた国家戦略特区です。ドローンを飛ばすとか無人走行バスが走るなど、Society 5.0をより具体的にイメージし体験できるような仕掛けを我々が考えるべきだと思います。

−−いずれも興味深い取り組みですが、大型の主催社企画に来場者が集中してしまいませんか。

 そういったことを回避するために会場レイアウトも大きく変更します。実は、2018年のCEATEC Japanでは通廊に色違いのカーペットを初めて敷き、展示エリアの違いを示しました。気付かれましたか。それでも、来場者が訪れたエリアには偏りがあったからです。

 主催社企画以外の出店エリアは(1)トータルソリューション、(2)スマートX(エックス)、(3)デバイス&テクノロジーの3つに分けます。トータルソリューションのエリア内を細かくは分けません。スマートXには、スマートファクトリーや、スマートヘルスケア、スマートコンストラクション、FintechやMobilityといった業種別のソリューション/製品を集めます。

 もう1つ、展示ではありませんが、コンファレンスも強化していきます。従来、基調講演は主催4団体の会長が務めてきましたが、2018年は「来場者が聞きたい講演」ということでローソンやコマツ、PFN(Preferred Networks)、ファナックの社長または会長に初日の基調講演への登壇をお願いしました。いずれも1000人規模の会場で立ち見が出るほどに盛況でした。

 この経験から2019年は、会期の4日間すべてに基調講演を実施する予定です。より魅力的な話題を業界をリードする企業のトップ自らに語っていただくことでで、来場者数の増加はもとより、1日だけざっと見て終わりでなく、展示やコンファレンスに複数日をかけてじっくりと見たり体験したりしていただけるCEATECにしたいと考えています。

−−Society 5.0に向けては、さまざまな技術やサービスが連携/融合し、新たなサービスが提供されます。半面、サービスが表層的にとらえられ、その裏側で何が起こっているのかが分かりづらく、結果、利用はできても開発できないといった指摘もあります。

 その意味では、CEATECの根幹をなしてきたデバイス&テクノロジーの展示エリアが重要なのです。Society 5.0はサービス重視の考え方ですが、それを実現するテクノロジーがブラックボックス化しては、さらなる発展は望めません。誰が開発した、どんなテクノロジーかをしっかりと明示する仕組みが必要です。

 CEATECの目的は、産業育成であり、そのための政策提言や海外への情報発信力の強化を図っています。今後はさらに、IoT人材の育成にも積極的に携わっていかなければならないと考えています。

 実は前年、東京医科歯科大学の先生が生徒さんにCEATECを訪れさせ、そこでのレポートを単位に認めるということをされました。それほど医療とデジタルテクノロジーの関係が強まっているということです。これは医療に限らず、あらゆる産業に共通です。大学生や高等専門学校の生徒たちが最先端のテクノロジーやサービスに触れられる機会を提供することも、Society 5.0に向けてCEATECがなすべき役割の1つでしょう。