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「Society 5.0」への変革を実現するために自らも変革、CEATECが”Japan”を外した理由

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年3月13日
CEATEC 実施協議会 エグゼクティブ・プロデューサーの鹿野 清 氏

2030年〜2050年に向けた日本の改革目標である「Society 5.0」(超スマート社会)。その実現に向け多くの企業が経営の舵を切り始めている。それを明確に示したのが2018年10月に千葉市・幕張で開かれた「CEATEC Japan」だろう。ローソンやコマツなど電機・電子業界外の企業が、デジタルテクノロジーを使った製品/サービスを出展し、Society 5.0の未来像の一端を問いかけた。そのCEATECは2019年、20周年を迎える。そこでは何が起こるのか。CEATEC実施協議会でエグゼクティブ・プロデューサーを務める鹿野 清 氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長)

−−2018年の「CEATEC Japan」は、ローソンやコマツなど電機・電子業界外からの出展も増え話題になりました。

 2015年の主催者企画「NEXTストリート」に始まり2016年からの「IoTタウン」などの取り組みが実を結んできたと感じています。IoTタウンは共創(オープンイノベーション)を志向した主催者企画ですが、ローソンさんの展示に見られたように、多くの企業がこれからの事業推進にはテクノロジーを取り込み、みんなで実現していく必要があると決断し始めているのです。

 そうした背景から2018年のCEATEC Japanでは、出展者3〜4割が初めての出展であり、来場者も4〜5割が初めての来場でした。日本が世界に先駆けて実現しなければならない「Society 5.0」に向けて、社会は大きく変わろうとしています。Society 5.0をどう実現し、そこでのビジネスをどう構築していけば良いのか−−。その方向を見いだすための“場”としての期待が高まっていると感じています。

 2月19日の10時からCEATEC 2019の申し込みを開始しましたが、初日の申し込み企業数は前年から3割り増えました。今回からネットでの申し込みに限定したことや、出展場所が先着順で選べることもありますが、多くの企業や団体がCEATECに期待されているのだと思います。主催社・運営者として改めて気を引き締めているところです。

−−2019年は20周年を迎えます。

 はい。20周年を節目に、これからの10年、20年を見据え、Society 5.0を目で見て触れられる場所に変えていきたいと考えています。その象徴として「CEATEC Japan」の名称を“Japan”を外した「CEATEC」に変更します。最大の理由は、グローバルでの存在感を高めることにあります。

 CEATEC Japanは、2000年にエレクトロニクスショー(旧日本電子工業展)と情報通信の展示会であるCOM JAPANと統合してスタートしました。当初はデジタル家電の最先端が展示され、海外からも注目されていたのです。それが、電機・電子や家電業界を取り巻く環境の変化とともに来場者は減り続けました。そこで企画したのが2015年のNEXTストリートであり、以後、来場者数は回復し2018年は16万にまで増えました。

 しかし、海外からの来場者は残念ながら2000人未満です。これに対し米ラスベガスで毎年1月に開かれるCESは、来場者数は18万人、メディアも4000人が訪れます。しかも、その半数が海外から来るのです。CPS(サイバー・フィジカル・システム)/IoT(モノのインターネット)、あるいはAI(人工知能)など同様のキーワードを掲げながら、これだけの差があるのが現状です。

 日本の各種産業の発展を考えれば、海外市場に向けて情報発信ができ、海外からの来場者を迎えられるかがCEATECには求められているはずです。“Japan”だけの展示会にとどまってはいられません。

−−海外への情報発信強化に向けた具体策は。

 いくつかを計画しています。1つは、主催者企画「Co-Creation Park」の強化です。2018年は、海外のスタートアップ企業が集まるパビリオンとして実施しましたが、2019年は国内のスタートアップ企業や大学の研究室などの出展ゾーンだった「スタートアップ&ユニバーシティエリア」を統合し、単なる製品/技術の展示にとどまらず、そこで新たな共創が起こるような空間にします。

 これまでも出展者間や出展者と来場者の共創に向けたマッチングへのニーズは把握していましたし、我々もマッチングをフォローしたかったのです。ただ残念ながら、そのためのノウハウを持ち合わせていなかった。共創をうたいながら、自分たちで何とかしようと考えていたことも反省点です。

 今後は、共創の考え方をCEATEC自身が採り入れ、出展者や来場者のために必要であれば、外部の力を借りてでも応えていこうと考えています。Co-Creation Parkでは、米国の大手アクセラレーターであるPlug & Playと協業し、マッチングやスポンサー獲得などのノウハウを採り入れていきます。2019年8月をメドにピッチコンテストを開催する予定です。

 もう1つは、2018年にローソンさんの出展で注目が高まった「IoTタウン」を「Society 5.0タウン」に発展させます。Society 5.0で実現される「未来のまち」を出展者の共創によって創り出したいと考えています。Society 5.0で街や住宅はどうなるのか、店舗や銀行、ホテルなどはどうなるのかなどを、より具体的に提示します。

 IoTタウンもコンセプトは同じだったのですが、よりサービスの提供を志向したエリアになると考えています。それにより海外への情報発信力の強化も図ります。