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ローソンの竹増 貞信 社長 「店頭での触れ合いや暖かさこそが強み、デジタルでバックヤードを大改革する」

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年1月23日
ローソン 代表取締役 社長の竹増 貞信 氏

コンビニエンスストアは我々の日常生活に溶け込み、なくてはならない存在になっている。日本全国にある約5万6000店のうち、約1万5000店舗を運営するのがローソン。デジタル活用を掲げる同社は2018年、CEATECに初参加する。Society 5.0に向けて、どのようなコンビニ像を描いているのか、そこでのデジタルをどう位置付けているのかなどを代表取締役 社長の竹増 貞信 氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長)

(本稿は、『Society 5.0テクノロジーが拓く私たちの未来』(JEITA:電子情報技術産業協会、2018年10月)からJEITAの許可を得て掲載しています)

−−ローソンは企業理念として「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」を掲げています。未来の社会インフラを考える「Society 5.0(超スマート社会)」の目標とも共通します。

 コンビニエンスストア(コンビニ)は“緊急購買”のニーズで発展してきました。「お醤油が切れた」「電球が切れた」「もう時間も遅いけれどどうする」といったときに「コンビニなら、あるよね」ということです。今では毎日、当たり前のようにコンビニに出向き、朝・昼・晩のそれぞれに、必要な商品を購入するようになっています。みなさんの生活に、さりげなく寄り添い、街の暮らしを支えるインフラとして機能したいと考えています。

 ローソンは1975年、大阪府豊中市に1号店を出店しました。店舗の広さは今とそれほど変わりませんが、中身はかなり違っていました。アメリカの豊かな暮らしを連想させる輸入雑貨を並べたり、カウンターで生ハムを販売したり、パンを切り売りで販売したりなどしていたのです。少し時代が早すぎたのかもしれませんが、今では不思議でも何でもなくなっています。

−−街では、少子高齢化や地方創生など、日本社会の課題が顕在化してきています。

 その街、その地域にあった店作りをし、顧客ニーズに、いかに応えていくかが問われるようになりました。日本全国、どのローソンに行っても同じ棚に同じ商品が並んでいるというシステムは、もう必要ないでしょう。24時間の営業時間の中には、色々なシーンがあってしかるべきです。

それぞれに異なる街の姿に合わせる

 これまでコンビニが得意としてきた営業時間帯は朝と昼です。最近は、夕方や夜間のニーズにも応えようとチャレンジしています。共働き世帯が増え、子育てや家事をこなすなかでは、買い物に出る時間も自宅で食事を作る時間も少なくなってきています。夕方に向けて店頭の品ぞろえを変えていくといったことにも取り組んでいます。

 逆に、ゆったりと買い物をしたいというお客さまもいます。都会と地方、朝と昼と夜でも、お客さまのニーズも時間の流れも変わってきます。それぞれに形が違う「みんなと暮らすマチ」があることを実感しているところです。

−−一方で、米Amazon.comのようなネットビジネスの台頭や、「Amazon Go」といった無人店舗も登場してきました。実店舗を持つ企業の多くが、これらを脅威に感じています。

 ネットビジネスを脅威とは考えていません。僕自身は非常にウェルカム(歓迎)です。Amazonのサービスは、とても便利で街の暮らしを幸せにしていくという点ではローソンと方向は同じです。競合ではありますが、共存できると考えています。

 ローソンは、人と人とが触れ合い、モノを実際に手にとって目で見て買うというリアルの世界を知っています。通勤・通学の途中にあり、お客さまに一番近いところにいる。だからこそ提供できるサービスがあります。「ネットビジネスとコンビニがあれば、だいたい大丈夫じゃないか」と思っていだけるところまで突き詰められれば、お客さまにとっても街の暮らしにとっても快適になるのではないでしょうか。