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JEITA、Society 5.0の実現に向けて共創の場を提供し異業種連携が新たな価値を生み出す

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年3月11日

−−データについてはプライバシーやセキュリティの懸念が強まっています。

 各所に設置あるいは機器に搭載されたセンサーなどから、さまざまなデータが集まり始めています。たとえば、エアコンのセンサーは、人の動きや熱量を感知できるので、いつ寝ているのか、いつ外出しているかが分かります。高齢者の見守りサービスなどに応用できる反面、漏えいすれば空き巣に入られる可能性もあります。

 EU(欧州連合)の「GDPR(一般データ保護規則)」など個人情報に対する認識が高まるなか、個人に関わるデータは、しっかりと保護したうえで利用することは当然の取り組みです。

 ただし、プライバシーやセキュリティを考慮するにしても、データ流通による新サービスの創出を遅らせてはなりません。そのため、スマートホーム分野では、家電と衣食住という、従来は全く連携がなかった産業がデータを介して連携し、新しい価値の提供に向けた検討を進めています。

 同様にモビリティサービス分野でも、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)の観点から、先端交通システムや電子部品、半導体といったJEITAの部会が連携し、次世代のサプライチェーン構築に向けた活動を強化しています。

−−CEATECの役割も大きく変わってきました。

 2017年にSociety 5.0をテーマに掲げて以来、多くの産業から広く出展を募るようになりました。2017年は出展者の約半分が新規の出展で、来場者も3分の1が初めてCEATECを訪れた方でした。私自身、出展者として毎年、CEATECを訪れていますが、会場に自動車が展示されている様子などを見ると「非常に変わったな」と実感します。

業種・業界の垣根を超えた新サービスを発信

 2017年は、金融や観光、スマートライフ、エンタテインメントといった業種からの参加がありました。2018年は新たに、物流・流通、スマートシティ、都市インフラ、農業や建設なども加わります。多彩な産業のフロントランナーが集結し、生活と密接にかかわるソリューションやサービスの可能性が発信されます。

 2018年の開催テーマは「つながる社会、共創する未来」です。政策から産業、技術まで、また国内外のあらゆるステークホルダーと問題意識を共有し、業種・業界の垣根を越えた連携や共創が生み出される場を目指します。

−−「Society 5.0」は大きなコンセプトだけに具体的に動けない企業があるかもしれません。

 モノとモノをつなぐとデータが取れる。そのデータを活用すれば何ができるかというところから発想すれば良いのでないでしょうか。

 たとえば三菱電機の場合も以前は、現場を訪れた際などに「コネクテッドにすればいいじゃないか」と言うと「どこから手を付ければ良いのですか」「それで儲かるんですか」といった反応が少なくありませんでした。あまりに消極的なので「海外では、すでにコネクテッドになっているのだから負けてしまうぞ」とけしかけていたほどです。

 ところが、誰かが簡単なところでもコネクテッドにしてみると、これまで分からなかったことが分かるといった成果が見えてきます。そうなると現場は常に最善策を考えていますから、「ならば、あれができる。こっちはどうだ」という形で、どんどんと仕組みができあがり広がっていくようになりました。「こうすれば儲かるんだ」と言うことを小さくても具体的な形にし、提示することが重要です。それを実践し改善を繰り返していくことが大切です。

 それでも、なかなか最初の一歩を踏み出せない企業もいるかもしれません。そうした企業は是非、具体的な成果を体感できるCEATECに来場していただきたい。動き出すためのヒントが、あちらこちらにあるはずです。

 大事なのは、単に絵を描くだけではなく、投資によりどのくらい儲かるかを実証することです。だからこそJEITAは、考えるためや情報を共有するための場の創出を重視しているのです。

−−柵山会長は、三菱電機の取締役会長でもあります。三菱電機はSociety 5.0にどう取り組んでいますか。

 当社の取り組みは多岐にわたります。一方で、経済産業省がSociety 5.0の実現に向けて取り組んでいる「Connected Industries」には5つの重点分野があります。それに関連する三菱電機の取り組みとして、自動運転、ものづくり、AI技術の3つを紹介しましょう。