- Column
- Society 5.0への道
JEITA、Society 5.0の実現に向けて共創の場を提供し異業種連携が新たな価値を生み出す
「Society 5.0」(超スマート社会)の実現を目指して、JEITA(電子情報技術産業協会)がさまざまな改革に取り組んでいる。電機・電子以外の産業からの会員入会や、年次イベント「CEATEC JAPAN」の開催趣旨の見直しなど変革は多岐にわたる。JEITAはSociety 5.0の実現に向けてどう動くのか。代表理事 会長で、三菱電機の取締役会長でもある柵山 正樹 氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長)
(本稿は、『Society 5.0テクノロジーが拓く私たちの未来』(JEITA:電子情報技術産業協会、2018年10月)からJEITAの許可を得て掲載しています)
−−「Society 5.0」を視野にJEITA自身の改革を進めています。
世の中は大きく変化しています。市場はモノからコトへ、利用する技術もIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータなどが重要になりました。いわゆる第四次産業革命の動きのなかで、ビジネスモデルが大きく変わってきたのです。
建機メーカーやジェットエンジンのメーカーが、製品にセンサーを搭載し可用性を高めるサービスを提供する。あるいは、スマートフォンやタブレットのメーカーが、端末という“モノ”を作るだけでなく、その上で動作するアプリケーションやエンタテインメントを提供する。そこでは、多くの企業と連携しながら生態系をなす“エコシステム”が重要になってきます。
プラットフォームを視野に価値の創出に踏み込む
かつてITといえば、ITベンダーだけが儲かるというビジネスでした。それが今は、ITベンダーというよりプラットフォームを提供している会社に利益が集まるようになっています。JEITAとしてもプラットフォームを視野に、単に道具を提供するだけでなく、道具を使って価値を作るところにまでに踏み込むことが求められているのです。
モノとサービスを結びつけ、他産業の企業やベンチャー企業とも幅広く連携し、社会課題を解決するようなソリューション型ビジネスを展開できるようにしなければなりません。
−−自動車や保険といった業界からの会員企業も増えています。
定款を変更し、2016年からITやエレクトロニクス業界以外からも会員として参画いただけるようにしました。JEITAとして社会課題を解決し、会員企業が成長していけるようにするためには、業界の垣根を越えた“オープンイノベーション(共創)”の場を作る必要があると判断したからです。
部会としても新たに、スマートホーム、ヘルスケアインダストリ、先端交通システムの3つを立ち上げました。ベンチャー企業の入会に向けた「ベンチャー優遇特例制度」も新設しました。
成果も出始めています。CEATECの主催者企画である「IoTタウン」が、その一例です。趣向を凝らした、さまざま展示が見られるようになりました。多様なメンバーによる共創が生まれ始めていることが分かります。多様な企業が会員になることで、個々の企業では実現できなかった新しい価値を生み出せる可能性は高まります。共創の場を増やしたいと強く思っています。
−−従来家電製品などが社会の成長を大きく支えてきました。
確かに、テレビやエアコンといった家電製品が普及することで人々の生活は豊かになりました。一方で、社会環境の側面からみれば、エネルギーの消費量は増えています。これからの社会を考えれば、経済的に豊かになりたいという願望と、エネルギー消費はできるだけ抑えたいという気持ちのように、相反するニーズを両立させられる解を常に考えなければなりません。
そのためにも、異業種がコラボレーションし、従来の業界の枠組みのなかからは提供できなかった新しい価値を生み出す必要があります。そうした共創を生み出すための場がJEITAの部会であり、展示会のCEATECです。
データ活用に向けた環境整備に注力
共創を促すために、政府への働き掛けも強化しています。税制要望がその一例です。2017年には、研究開発税制において「ビッグデータ等を活用した第4次産業革命型のサービス開発も支援対象に追加」することを、2018年は「IoT関連投資の促進に向けた税制措置の創設」を要望しました。いずれも、税制大綱などに、要望が受け入れられる形で明記されました。IoT関連の優遇策は、いわゆる「Connected Industries税制」の創設のことです。
海外展開に向けて、データの流通環境を整備することにも取り組んでいます。最近はデータの流通を一部制限しようとする動きもありますが、データ活用を前提としたSociety 5.0の実現を妨げかねません。そこで、欧米の産業界とも連携し国際交渉における「TPP電子商取引3原則」の採用を促しています。2019年に向けては、日米欧の産業界による共同文書の作成や官民対話などを実施する計画です。