• Column
  • Society 5.0への道

JEITA、Society 5.0の実現に向けて共創の場を提供し異業種連携が新たな価値を生み出す

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年3月11日

 自動運転の基本は、センサーと自動車の制御技術を組み合わせ自律的な運転を可能にする仕組みです。しかし、豪雨や雪などで、自動運転のガイドラインになるセンターラインが見えなくなれば、どうするかといった課題があります。

 それに対して当社は、高精度な測位技術と高精度な三次元地図を組み合わせ、クルマ自体の位置を正確にとらえることで、自動運転の高度化を図ることを提案しています。

三菱電機の取締役会長でもある柵山 正樹 氏

高精度測位の応用はクルマの自動運転にとどまらない

 高精度測位は、準天頂衛星システム「みちびき」を使うもので、2018年11月からサービスが始まります。一方の高精度三次元地図は、自動車メーカーや地図メーカーらと専門会社のダイナミックマップ基盤を2年前に立ち上げました。自動運転向け地図情報では多くの自動車メーカーが採用しているオランダ企業のHERE Technologiesとも提携しています。

 高精度測位の仕組みの応用は、クルマの自動運転にとどまりません。災害時の被災状況を可視化したり、橋梁やトンネルといった社会インフラの老朽化や維持管理などにも利用できます。そのほか、鉄道や農機、建機、観光・個人サービスなどにも活用できます。

エッジコンピューティングで「e-F@ctory」を進化させる

 ものづくりの領域において三菱電機は、さまざまな現場に向けた設備を提供してきました。そうした中でFAとITを活用したソリューション提案である「e-F@ctory」のコンセプトを2003年から提唱しています。

 e-F@ctoryの考え方を進めていくと、フィールドネットワークから得られるデータが、どんどん増えていきます。それをサーバーシステムに送り込み、ビッグデータとして処理していると、リアルタイム性が損なわれたり、分析に必要なハードウェア能力の確保が課題になったりします。

 そこで今、注力しているのがエッジコンピューティングの領域です。エッジになる場所はさまざまです。NC機械1台の場合もあれば、設備を組み合わせた生産ライン1本の場合もある。あるいは工場の建屋全体をエッジと捉えることもできます。それぞれのエッジで、必要なデータを収集し、分析結果を返していくのです。

 このような考え方で進めていくと、当社の機器だけをつなげば良いというわけにはいきません。さまざまなメーカーの機器をつなぐ必要があります。そのために、当社は幹事会社として参画し、他幹事会社と協働して推進団体の「Edgecrossコンソーシアム」を立ち上げました。

−−AI領域もエッジ重視ですか。

 Society 5.0の全体像でいえば、ビルやクルマなどもエッジに相当します。最適な場所で判断し制御するという考えに立てば、クラウド上で動作するAIだけでなく、エッジ側で動作するAIを用意しなければなりません。そのために三菱電機が開発しているAIが「Maisart」です。演算量を削減し、エッジ側でディープラーニングや、強化学習、ビッグデータ分析などを実行可能にしました。

 当社のエアコン「霧ヶ峰」にはAIが搭載されています。部屋の温度や陽の当たり具合の変化を予測し、運転状況を制御しています。またテレビCMでも紹介していますが、駅の監視カメラの映像をAIで分析し、ベビーカーや車椅子の人を認識したり、忘れ物や体調不良な人を検知したりといったソリューションも提供しています。

−−三菱電機のポートフォリオを考えると、Society 5.0に向けた将来イメージなどを描けそうですね。

 そこは今、鋭意取り組んでいるところです。ポートフォリオの幅広さをいかすために知恵を絞っています。専門外の領域では協業しながら、自らの強みを発揮することでSociety 5.0の実現に貢献していきます。

柵山 正樹(さくやま・まさき)

電子情報技術産業協会(JEITA)代表理事 会長/三菱電機 取締役会長。1976年東京大学大学院工学系研究科修士課程(産業機械工学)修了、77年東京大学大学院工学系研究科博士課程(産業機械工学)中退、三菱電機入社(神戸製作所配属)。電力・産業システム事業本部、半導体・デバイス事業本部などを経て、2014年6月に取締役代表執行役 執行役社長に就任。18年4月から取締役会長。18年6月にJEITA代表理事 会長に就任。