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神戸市がCEATECでニューノーマル時代の企業誘致、“進取の気風”の国際都市に暮らし自治体課題の解決を

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年10月16日

−−地方創生などで地域の課題が話題になる機会が増えていますが、人口150万人、国際都市神戸といったイメージから、地域課題の中身が他の地域とは異なるようにも思いますが、神戸市の課題はなんでしょうか。

 阪神淡路大震災からの復興は着実に進んできましたが、現在最も大きな課題は人口減少です。全国的に少子高齢化が進んでいますが、同じ人口規模である福岡市や川崎市などの政令指定都市と比較しても伸び悩みが見られます。神戸市の持続的な成長を考えれば、特に若い世代の人口減少は大きな課題です。

 他の政令都市だけでなく、大阪、京都といった近畿圏での競合もあります。市内には山間部のニュータウンや農業地域などもあり、それぞれの地域で他の地域と同じような課題を持っています。

 だからこそ、さまざまな実証実験が可能だと考えますし、それらが比較的コンパクトに集まっている点が進出企業には魅力になり、ある地域での課題解決が他の地域での横展開につながるメリットもあると思います。

ニューノーマル時代の働き方改革が追い風にも

−−さまざまなプログラムの参加者のなかに、神戸市に進出した企業はあるのでしょうか。

 はい。たとえば「500 KOBE ACCELERATOR」に参加した企業のうち、7社が神戸市に進出しています。そのうち3社は海外からの進出です。そのほか、プログラムに参加した企業のうち、神戸に進出され、神戸市の補助制度を活用していただいている企業もあります。

 今後はさらに、新型コロナの影響もあり、新たな働き方や暮らし方への関心が高まっています。リモートワークの広がりもあります。

 最近もパソナグループが本社の主要機能を東京から兵庫県淡路市に移転させるとの発表がありました。淡路市は神戸市内から車で30分ほどの距離にあります。こうした企業の取り組みは、企業誘致にとっては追い風になるでしょう。

 より魅力的な環境を求める企業の動きは、今後ますます加速すると見られるからです。ニューノーマル時代の本社機能や働き方などを実現するために、神戸市が持つ環境が魅力的だと思ってもらえるのではないかと考えています。

−−スタートアップの支援や協働など確かに神戸市の取り組みは早かったわけですが、今では多くの自治体や企業が同様の取り組みを始めています。そうした中で改めて神戸市の魅力は何になりますか。

 神戸市は、明治から150年以上続く神戸港や、100万ドルの夜景が見られる六甲山など豊かな自然に恵まれた国際都市であり、ファッションや食文化などの発進地であり、多様な異文化交流を育んでいます。

新しいことを「面白い」と捉える“進取の気風”がある

 そうした背景から神戸市には、オープンマインドで新しいもの好きな“進取の気風”があります。新しい考え方や仕組みなどを「面白そう」と感じ「実際にやってみよう」と取り組む文化が神戸市にはあるのです。

 各種の実証実験を実施するにしても、地域住民の方々も「面白そう」と一緒に取り組んでくれますし、市職員にしても「面白い」という気持ちをもって協働に参加しています。こうした文化こそが、新しい取り組みに対するハードルを下げ、新しいビジネスにも挑戦しやすい環境を生み出しています。

 これは、過去に前例のない方法で課題解決に取り組んでいかなければならない現代にあっては、大きな魅力になるのではないでしょうか。

 たとえば今回のCEATECへの出展も、オンライン開催が決まったのが数カ月前であり、準備期間は決して十分ではありませんでした。それでもオンラインならではの訴求ができるよう、紹介動画などのコンテンツを制作しています。

 これからも、さまざまな展示会や発表がオンラインで開かれるとすれば、今回の出展経験は今後も活かせるのではないかと考えます。こんなところにも神戸市の進取の気風”が現れているのではと自負しています。

 CEATECへの出展に合わせて、各プロジェクトの公式ページの案内や、神戸市への企業進出を支援するポータルサイト「TRIGGER KOBE」への誘導など、会期後も、つながりが生まれるブースづくりを目指しています。

 もちろん会期中は、コミュニケーションチャット機能などを利用し、リアルタイムでの情報発信や質問などにもお答えしています。チャットには市職員が交代で当たりますし、私自身が担当する時間帯もあります。

 冒頭でもお話ししたように、完全なオンライン形式の展示会には、どこからでも参加できるため、新しい出会いや情報発信の機会が増えるのではないかと期待しています。新たなことにチャレンジを続けられている会社や組織の皆さまに、ぜひとも神戸市とつながっていただきたいです。