- Column
- Society 5.0への道
JETROが海外スタートアップとの「出会いの場」をCEATEC 2020 ONLINEで創出
過去最大規模の17カ国から45のスタートアップが参加
CEATEC 2019では日本×カナダの共創が誕生
具体的なオープンイノベーションの事例も生まれています。カナダのAI(人工知能)分野のスタートアップ企業であるモーション・ジェスチャーズが、画像認識技術の応用製品を開発する日本のセンスシングスジャパンとパートナーシップ契約を締結しました。
モーション・ジェスチャーズは、人の手の動き、つまりジェスチャーを認識するAI技術を開発しているスタートアップです(図2)。手の関節を12等分し、その動きを認識するのですが、高い精度と、AIのための膨大な学習データを持っていることが強みです。そのため、現場では教師データが不要で、カメラさえあれば手の動きをすぐに認識できるのも他社にない技術です。
一方、センスシングスは画像のモニタリングやカメラを使った画像認識をデバイスに落とし込む技術を誇ります。モーション・ジェスチャーズが持つ技術との親和性が高いと判断し、コミュニケーションを重ねていきました。2020年1月に開催された自動車関連展示会「オートモーティブワールド」でモーション・ジェスチャーズの技術をデモ展示したところ、非常に大きな反響があり、パートナーシップの締結に至りました。
−−両者の共創からは、どんなイノベーションが期待できそうでしょう。
現在のコロナ禍によって、さまざまな場面で「非接触」を可能にする技術が求められています。たとえば、エレベーターの操作でも、ジェスチャーで目的階が認識できれば、実際にボタンに指を触れる必要はなくなります。物理的な接触による感染防止につながるのです。
自動車の運転時なら、ハンドルから手を離すことなく、声と身振りだけでオーディオを操作したり窓を開閉したりも考えられます。自動運転の進歩を考えると将来的には、ジェスチャーだけで運転ができる日が訪れるかもしれません。その意味で、まさにニューノーマルの時代にふさわしい企業のコラボレーションの形ではないかと考えています。
ニューノーマルな社会に向け3つの重点領域を展示
−−CEATEC 2020 ONLINEでのJETRO Global Connectionは、どのような出展になりますか。
CEATEC 2020 ONLINEのキーワードの1つである「ニューノーマル(新たな暮らし)」に共感し、今回の出展テーマを「ニューノーマル社会とともに歩む」と設定し、「モビリティ」「ヘルステック」「スマートシティ」の3つを重点分野にしました。この分野にあったスタートアップを世界中から選定し、過去最大の45社が、ニューノーマル社会で使えるテクノロジーを紹介します。
もう少し具体的に紹介すれば、まずモビリティでは、中国から参加する小型自動運転車両のスタートアップがあります(図3)。5G(第5世代移動通信システム)を使って、歩行者を避けながら無人で安全に物を運びます。すでに実用化されており、たとえば先の武漢ではコロナ発生時に短期間で建設され話題となったハイテク病院に導入され、医療物資の運搬などに使われているそうです。
カナダのスタートアップが開発した、介助なしで使える自動運転の車椅子もあります。コロナ患者と医療従事者との病院内での接触を回避できる技術です。
ヘルステックでも非接触は大きなテーマですが、今回の目玉の1つが、トルコのスタートアップによる「スマート白杖」です(図4)。視覚障害者や高齢者が使う白杖がスマート化され、位置やバスの時刻表などの情報を伝えると同時に、杖を使っている人の行動を分析し、より最適なガイドができたりします。
これもすでにAmazon.comで販売されていますし、米Microsoftが同社との協業をカンファレンスで紹介するなど世界の各方面で注目を浴びています。
スマートシティは、日本でも関心が高まっている分野です。カメラによる歩行者の行動予測や行動解析は、コロナ禍での店舗への入場制限や密になりそうな場所の予測などに使えます(図5)。
ドイツのスタートアップ発の人物画像の匿名化技術なども紹介します。画像データから得られる年齢や特徴などはそのままに、顔の画像を一部変化させて個人として特定できないようにする技術です。スマートシティで必要になるデータと、個人情報の保護を両立する技術ともいえます。