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JETROが海外スタートアップとの「出会いの場」をCEATEC 2020 ONLINEで創出
過去最大規模の17カ国から45のスタートアップが参加
日本企業の課題解決には海外スタートアップとの共創が重要に
−−スタートアップとの共創にはさまざまな取り組みが増えています。JETROがオープンイノベーションの支援に力を入れる理由や狙いは、どこにありますか。
2019年度からのJETROの中期計画において「イノベーション」が大きな柱に位置付けられ、我々も「日本のスタートアップの海外展開支援」と「オープンイノベーションの支援」等に注力しています。しかし、イノベーションの創出には、さまざまな課題があり、日本企業単独の取り組みだけでは間に合いません。
いわゆる「自前主義」にこだわらず、海外の優れたスタートアップとのオープンイノベーション(共創)を実践していくことで、日本の社会課題解決や日本企業の競争力向上、そして日本のエコシステム強化に貢献していきたいと考えています。
現在のコロナ禍で直面している課題を見ても、日本だけでは解決が困難な問題が数多くあります。海外と共通する課題も多いですし、この先さらに日本社会や日本企業のビジネス自体がグローバル化していけば、こうした課題も増えていくと思われます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)やスマートシティの実現など、さまざまな課題に確実に対応していくためにも、海外の先進的なテクノロジーを日本企業にご紹介することは、非常に重要だと考えています。
以前は、JETROが主催する海外スタートアップの紹介イベントは、「視察型」や「セミナー型」など受動的な形態が中心でした。しかし昨年度からは、新たにオープンイノベーション支援の専門部署であるイノベーション促進課を立ち上げ、日本企業の側から積極的にアクションを起こす「逆提案型」の事業形態も採り入れています。
逆提案型は、「リバースピッチ」と呼ばれる手法で、日本企業が自社の課題や求める技術をスタートアップなどにピッチで訴え、解決策を募るというものです。
たとえば2019年9月~10月に実施した「オープンイノベーションミッション」において北欧三可国(フィンランド、スウェーデン、エストニア)を訪問した際には、リバースピッチ形式で日本企業のから英語でプレゼンテーションをし、マッチする現地企業とは1対1のミーティングで詳しく話すという試みを実施しました(図6)。
スタートアップは技術面・経営面から専門家とともに入念にチェック
−−公的機関であるJETROがスタートアップを紹介するとなれば、受ける側としては一定の保障を期待すると思われます。
はい、スタートアップの世界では動きが激しいだけに、紹介するスタートアップについては非常に慎重に見極めています。コロナ禍で非常に企業経営が難しい状況になっていますので、事業が立ちいかなくなるスタートアップや、事業形態を全く異なるものに転換しているケースもありえます。
その点では、JETROは世界各国に75の事務所を持ち、現地のさまざまなエコシステムとつながりを持っています。これらの拠点を通じてスタートアップを発掘したり、「エコシステムビルダー」と呼ばれる各国の支援組織などから紹介を受けたりしています。
CEATEC 2020 ONLINEに向けては、ニューノーマル下でも確実に応用できる技術を持っているか。技術面でも経営面でも妥当な評価を得られているかなどを、専門家とともに入念にチェックして招致を決めています。そうした厳格なチェックを経て決まった45社なので、是非、積極的なコミュニケーションをとっていただきたいと思います。
−−CEATEC 2020 ONLINEでの新たな共創に期待したいですね。
スタートアップとの共創を成功させるには、できるだけ多くの企業と出会い、本当に組める相手を絞り込んでいく努力が欠かせません。昨年の成果として紹介したセンスシングスのケースでも、以前からJETROの種々のイベントに参加いただいてきたなかで、CEATEC 2019でモーション・ジェスチャーズと出会い、契約締結に至ったという経緯があります。
JETROは昨年度だけでも、件数にして1000を超える商談の機会をさまざまな場を通じて提供してきました。そうした中から新たな協業や連携の成功事例が出てくることを期待しています。各国政府やスタートアップ支援機関、イノベーターから日本企業に海外スタートアップを紹介したいというオファーも数多くいただいています。今後は日本企業の皆様に、具体的な交渉の進め方や海外スタートアップとの協業検討のポイントなどのアドバイスなども提供していく考えです。
CEATEC 2020 ONLINEは、これまでに経験したことがないオンライン開催ですが、新しい環境における新たな“出会いの場”を創出するチャンスだと捉え、会期中はもとより、今後にもつなげていきます。是非、海外の最先端のスタートアップと触れ合える貴重な場ですので活用いただければと思います。