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One to Oneマーケティングを進化させる利用者情報【第3回】

清家 直裕(ADKマーケティング・ソシューションズ デジタルビジネスプロデュース本部 本部長)
2019年7月25日

SNSではコンテンツや広告の表示内容を制御

 これがSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイトになれば、自分に関連した広告が表示されるだけでなく、友達などが投稿したコンテンツも、利用者の閲覧データや、SNSサイトに登録したデータなどを踏まえて配信されている。

 たとえば、あるサイトで野球の記事、特にお気に入りのチームの記事を見ていると、タイムラインがお気に入りの野球チームの記事が多くなってくる。また、あるサイトを訪れれば、その後もそのサイトに関連した広告が良く表示されるようになる。

 その裏側でも、サイトへの広告配信同様に、利用者に最適なコンテンツや広告を配信するための仕組みが動いている(図2)。その中核に位置するのが、利用者に関するデータを集めたデータベースだ。

図2:SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)においてコンテンツ/広告を利用者に最適表示するための仕組みの概念

 同データベースには、利用者の登録情報(性別や年齢、移住地、既婚未婚の別、・出身地、出身大学など)のほか、利用者がフォローしている人や友達の情報、検索したワードや検索した時間、閲覧しているコンテンツの種類やカテゴリー、クリックした広告など、種々のデータが蓄積されている。

 SNSの運用者は、このデータベースをAI(人工知能)などで分析し、利用者1人ひとりに合わせた最適な広告やコンテンツを配信することで、利用者の情報体験や広告体験を向上させているのである。

IoT家電が利用者情報を取得する新たなセンサーになる

 サイトやSNSにおいてOne to Oneの大元にあるのは、利用者がキーボードやタッチパネルを操作して“能動的に”入力した情報だ。しかし、より利用者一人ひとりに近づこうとすれば、PCやスマートフォンなどを操作していないときの利用者情報も知りたくなる。そこで期待が高まっているのがIoT(Internet of Things:モノのインターネット)である。

 IoTは、センサーなどを使って収集したデータを分析することで、機器を最適に制御したり、故障の発生などを予測したりするための仕組みだ。冒頭で筆者の体験談として、スマートスピーカーの「Google Home mini」を挙げたが、一般個人を対象とした最適化において重要になってくるのが、それらスマートスピーカーを含めたIoT家電だ。

 IoT家電は、照明やエアコン、炊飯器などをIoT化したもの。スマートフォン用アプリケーションを使って遠隔地から操作し、照明の明るさを変えたり、エアコンの温度を調整したり、あるいはご飯が炊きあがる時間を設定したりが可能になる。

 これらは利用者の能動的な設定によるものだが、各種センサーを使えば、在室時のみ照明を点灯させたり、スマホの位置情報を使って自宅から一定距離を離れたらエアコンを停止し、一定距離内に近づいたらエアコンを運転し帰宅までに室温を最適化するといったこともできる。利用者が無意識のうちに関連する行動情報が取得できることになる。

 当然、こうした利用状況はデータベースに蓄積される。そこでは利用者が操作するIoT家電も一種のセンサーとして機能する。照明の点灯時間から在宅時間を推定したり、エアコンの設定温度から好みの温度を推定したができるからだ(図3)。

図3:IoT家電における利用者データの活用メリット

 蓄積した情報は、別のサービスと組み合わせることで、利用者に提供できるサービスのアップグレード、あるいは全く新しいサービスを提供することも可能になる。具体的には、不在時のセキュリティーサービスや、不在時には電力の使用料を自動的に抑えるサービスなどである。