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ヒバラコーポレーション、職人技依存の金属塗装業界にデジタルで新風を【効率化編】

工程をデータで可視化して社内外で徹底活用

DIGITAL X 編集部
2020年3月16日
金属塗装業界にデジタルで新風を吹き込むヒバラコーポレーション。右から2人目が小田倉 久視 社長

ヒバラコーポレーション(茨城県東海村)は、金属塗装/工業塗装を手掛ける従業員40人ほどの企業である。同社の強みは、過去40年分もの膨大なデータの蓄積だ。データ収集・活用のための生産管理システム「HIPAX」も自社開発している。データによる“説得力”を武器に顧客と交渉するだけでなく、同業他社の経営を支えるコンサルティング事業にも乗り出している。【効率化編】では、データ活用に向けた自社製の生産管理システムを中心に紹介する。

 茨城県東海村に本社を構えるヒバラコーポレーションは、金属塗装を生業とする。従業員は約40人で、その平均年齢は37歳前後である。量産型の塗装ではなく、ほとんどが個別対応だ。中堅/大手の取引先から塗装工程を受注し、仕上げた分の対価を請求する。

 金属塗装/工業塗装業界では一般に、顧客企業の複数部署から厳しい要求を突きつけられる。調達部からは「コスト削減」を、製造部からは「短納期」を、一方で設計部は「仕様通り」を、それぞれ要求してくる。さらに品質管理部の要求もある。近年は品質チェック業務を外部委託するケースが増えている。「評価が厳しくなる傾向にあり、ともすると“過剰品質”に拍車がかかる」と、小田倉 久視 社長は実状を語る

 受注側としては、各部署の要求を勘案した“全体最適”な塗装を提案したい。ただ現実には、顧客の各部署が要求を互いに譲らないことから、以前より厳しい条件でなければ受注できないなど、「塗装業者が“泣き寝入り”せざるを得ない状況が、そこかしこに生まれている」(小田倉社長)という。

 このような状況に一石を投じるためにヒバラコーポレーションが取り組んできたのがデータによる説明・説得だ。「塗装に関わるプロセスやノウハウは“職人技”と一言で括られがちだ。だが、それを正確なデータとして把握できれば、交渉・提案に向けた“説得力”になる。だからこそ当社は、データ取得を徹底し、過去40年分のデータをベースに構築している」と小田倉社長は力を込める。

月に約2万件の塗装案件の生産工程のすべてを一元管理

 データに基づく説得力を支えているのが、自社で開発する生産管理システム「HIPAX(ハイパックス)1」だ(図1)。月に約2万件の塗装加工に対し、すべての案件の納期や工程の進捗など生産工程全般を一元的に管理する。前身のシステムを含めると約20年にわたり改良を続けてきた。その間に大きなバージョンアップを3回、実施している。

図1:「 HIPAX(ハイパックス)」のシステム概念

 HIPAXの基本的な考え方は、「職人の加工作業に関する暗黙知を形式知へと変え、職人を多能工化することでコスト競争を勝ち抜く」(小田倉社長)である。その想いを具現化するために、どうすれば合理的に仕事が進むかを追求し、工法を改良したり、各工程にどの程度の時間をかけるのが妥当かといった基準を定めたりしてきた。

 これら一連の取り組みから導いた“あるべき姿”に基づき、HIPAXは工場内の実態を可視化する。各工程の作業開始と終了をバーコードで入力し、1品ごとに進捗状況を管理。さらに実際の作業結果を撮影し、画像データを作業内容に紐づけることもできる。

 この仕組みを実現したことで、まずは社内の業務スタイルが変わった。「各加工工程のユニットリーダーが、作業時間などの実績値を見ながら目標値に近づくよう努力したり、ユニット間で協力したりするようになった」(小田倉社長)。それも「すべてはデータの裏打ちがあるからこそ」(同)である。

 インターネット経由で社外からもHIPAX1にアクセスできるようにした際も、新たな価値を生んだ。たとえば、顧客先での打ち合わせにおいて、顧客の問い合わせに対し、加工状況をその場で正確に答えられるになった。これまでなら「社に戻って確認してから回答します」と答えるしかなかった。小田倉社長は「客先での即答できることが信頼性の向上につながっていった」と話す。

 さらに、顧客自身が直接HIPAX1のデータを参照し状況を自ら確認できるようにもした。工業塗装分野では、一度発注したら、しばらくは“ブラックボックス”になり納品まで状況は見えないのが通例だった。

 HIPAX1では、いちいち電話で問い合わせなくても顧客は、最新状況を画像付きで確認し、工程や納品タイミングが把握できる。小田倉社長は「納品後の組み立て準備や、それに伴う人員計画などを進めておけるため、発注側にも有益な機能を提供できている」と感じている。