- Column
- ドローンの業務活用を考えるための基礎知識
「点検」に見るドローン活用が業務に与える“3S改革”【第3回】
価値2:位置情報
多くのドローンは、飛行を制御するために、自機の位置を何らかの形で測定しています。代表的な仕組みは、GPSなどのGNSS(全地球航法衛星システム)です。他にも高度計やIMU(慣性航行装置)など、複数のセンサーを用いて自機位置を測定しています。この自機位置の情報と、画像や映像などのデータを組み合わせることで、新たな価値を生み出せます。
たとえば、広大な敷地を持つ大規模太陽光発電所は、ドローンによる点検に適した対象です。しかし、上空からの画像で故障個所を発見しても、数ヘクタールにおよぶ太陽電池パネルのなかから、その位置を特定するのは至難の業です。
ここに、ドローンが持つ位置情報と故障個所の画像を合わせれば、どこで発生した、どんな故障なのかが一目瞭然です(写真3)。部材の調達や補修計画の策定に、非常に価値の高いデータになります。
ドローンで収集するデータには、他の点検手法では得られない価値があります。ドローンによる点検を検討する際は、その価値が有効に活用できる対象かどうかを、よく見極める必要があります。
(2)実導入までに必要なステップ
ドローンによる点検の価値を理解し、それが十分に発揮できる対象を選定できれば、実際業務に導入するための検証を実施する必要があります。ただドローンだからと言って特別なことはあまりありません。業務に新しい技術を導入する際には必要なステップですから、新技術の導入経験がある方には頷ける内容ばかりだと思います。
まず必要なのは「技術的な実現性」の検証です。当たり前ですが、想定される点検業務が、技術的にドローンで実施できるかの検証は不可欠です。
机上で実施計画を策定し、成功要件を設定すれば、それに合ったスペックの機体・機材を選定して、実地または想定環境で実験を行います。実験は複数回に渡ることも多く、要件の充足度を高めるために、機体やソフトウェアの開発を伴う場合もあります。この実験で重要なことは、業務内容に即した明確な成功要件(ゴール)を設定することです(写真4)。
メディアがよく「X社が○○のドローン点検に成功」等と報じていますが、それは「技術的な実現性が検証できた」という段階であることが多いです。この検証は重要ですが、「技術的に可能」というのと「業務へ実装」との間には、まだ大きな隔たりがあることには注意が必要です。
次の検証は「ビジネス的な実現性」です。ドローンのようにリスクを伴う新技術の導入においては、上述したようにメリット/デメリットを十分にアセスメントすることが重要です。
最もわかりやすいのがコストメリットです。しかし、それだけではなく、安全性や業務プロセスの改善による効果、作業人員の状況、最新技術導入による企業イメージなど、多面的に評価し、ビジネスとして成り立つかを検証すべきでしょう。