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  • ドローンの業務活用を考えるための基礎知識

ドローンで収集した画像データの活用方法【第4回】

吉井 太郎(センシンロボティクス 執行役員 エバンジェリスト)
2020年4月21日

災害発生時にはリアルタイムな画像データが有効

 測量のように収集したデータを分析・加工して活用方法に対し、注目が集まっているのが、ドローンの機動力を活かして、データをリアルタイムに活用する方法です。

 ドローンに搭載されるカメラは、「ジンバル」と呼ばれる安定化装置により、ドローンが激しい動きをしても非常に安定した映像を撮影できます。カメラ自体もズームレンズや高解像度センサーを備え、多様な目的に対応できるようになってきています(写真1)。

写真1:安定化装置「ジンバル」やズーム機能を備えるカメラもある。写真はDJI製の30倍ズームカメラジンバル「Zenmuse Z30」と、ズーム撮影の例

 カメラデータのリアルタイム性が問われる活用方法の第1が、災害時の状況把握です。

 災害発生時に被害を最小限に抑えるには、適切なリソースを迅速に投入することが不可欠です。それには何より被災現場の状況を把握できなければなりません。ところが、災害発生直後の現場は、交通の混乱や二次災害の危険など、人が近づけない状況にあることがほとんどでしょう。そこでドローンの“空からの目”が非常に有用になるのです。

 その際に大切なのは、リアルタイムのデータを迅速に意思決定者まで届けることです。大きな災害になるほど、対応の意思決定を下す人が現場にいることは稀で、通常は自治体や行政の危機対策本部などで指揮を執っています。ドローンの災害活用では、単に空から映像を撮影するだけでなく、映像の伝送技術や伝送に使われるデータ通信の技術も重要になってきます(写真2)。

写真2:災害時に開設される危機対策本部にまで映像をリアルタイムに伝送する必要がある。写真は愛媛県での「原子力防災訓練」における本部の様子

警備・監視業務への活用では複数ドローンの同時運行なども必要に

 リアルタイム性が求められる活用分野のもう1つは警備・監視業務です。警備業界も人手不足が深刻化し、ドローンの活用が期待されています。特に常時有人で監視しているような重要施設の警備では当然、リアルタイム性の重要度が高まります。

 とはいえドローンをマニュアルで操縦し、1機が撮影する映像を1人の警備員が、かじりつきで監視するような使い方では、人手不足の解消にはつながらないでしょう。警備監視は、リアルタイムの映像データの活用法としてわかり易い業務ですが、それだけでは有用なソリューションにはなりにくいのです。

 警備監視業務でドローンのリアルタイムデータを有効に活用するには、自動航行による複数機の同時運用や、画像認識などを使った対象物(侵入者・不審車両など)の自動検出など、監視要員の負担を減らす技術との併用が不可欠です。さらに、一般的に業務時間が長時間に及ぶ警備業務では、運用自体の負担を減らすことも重要です。バッテリーを自動的に交換したり充電したりする「ドローン基地」のような技術も必要になってくるでしょう(写真3)。

写真3:カメラで撮影した画像/映像をAIで認識したり、ドローンの運用負荷を自動化技術で軽減したりする必要がある

 ドローンによるリアルタイムデータ活用は、飛行や撮影などのデータ収集技術のみでは有効にはなりません。データ伝送と、それに伴う通信技術、画像認識などの自動化技術、ドローン運用そのものの自動化・効率化など、さまざまな技術と組み合わせて効果が最大化するのです。

 ドローンのリアルタイムデータ活用は、まだまだこれからの分野ではありますが、今後実用化の進む5GやAI(人工知能)との相性が良い領域では飛躍的な発展が望めます。