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  • ドローンの業務活用を考えるための基礎知識

ドローンで収集した画像データの活用方法【第4回】

吉井 太郎(センシンロボティクス 執行役員 エバンジェリスト)
2020年4月21日

点検用途では人の能力を超えるセンシング能力が必要に

 前回、“ドローン活用の本命”として「点検」を挙げました。ここでも可視光カメラも使いますが、それ以外の種々のセンサーを組み合わせる必要性が高まってきます。点検用途では、一般的な可視光カメラの能力だけでは十分な画像データが取得できないためです。

 一言で点検と言っても、そこには、さまざまな業務が存在します。その中で点検業務として最も実施されているのが「目視」による点検です。目視点検は、特別な機材を用いずに人間の目で行う点検ですが、対象に近づくことで非常に詳細な点検ができます。

 たとえば交通インフラ系の近接目視点検では、幅0.2mm程度のクラックまで見つけることが求められます。0.2mm以下のクラックを見つけるには、対象に顔をくっつけるように近づけて見る(近接目視)必要があります(写真4)。

写真4:送電線を目視点検するには作業員が鉄塔に上ル必要がある

 その際、第2回でお話ししたように、ドローンは対象に触れたり極端に接近したりが苦手です。この苦手な作業を克服するために種々のセンサーを駆使しようというわけです。

 人間の目視の代わりになるカメラにおけるキーワードは「解像度」です。対象を「どのくらい細かくとらえるか」の尺度です。長い焦点距離のレンズを使うことや、撮像画素数の多いセンサーを使うことで高められます。

 最近はジンバルが進化したことで、ブレが起こりやすい長焦点距離のレンズが使えたり、1億画素を超えるような超高画素センサーを搭載したカメラが登場したりしてきており、ドローンでの近接目視点検を可能にしています。

可視光以外をとらえるセンサーで熱やガスなども測定が可能に

 人間の目に代わるだけでなく、人間の目を超える機能を持つセンサーも活用されています。点検業務で有効なセンサーである「サーマルカメラ」が、その一例です。遠赤外線を検知し「熱」を見られるセンサーです。多くの設備や機材は、異常な発熱が故障の兆候として表れます。火力発電所など高温のガスを扱う施設でもサーマルカメラは有用なセンサーです。

 人間に見えない波長の光を扱うセンサーで、最近注目が集まっているものに「OGI(Optical Gas Imaging)」があります。目に見えないガスが特定の波長の光を反射する性質を利用し、光学的にガスを検知する技術です。特に、さまざまなガスを扱う化学プラントなどでの活用が期待されています。

 ドローン自体の防爆対応などの課題はあるものの、OGIと組み合わせた機動力のあるガス漏洩検知システムが近い将来、実現するかもしれません。

 さまざまセンサーを組み合わせることで、点検に有効なデータが収集できます。これらのデータを施設や設備の保全業務で活用するには、収集後の管理と、分析・解析が重要です。センサーからのデータに現れる設備・機材の状態、故障や異常の兆候、老朽化や劣化の度合いをデータベース化し、業務フローも抜本的に見直す必要があるかもしれません。

 ドローンをはじめとするIoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術の発展により、業務に有用なデータが「大規模に、高速に、安全に」収集できるようになります。この時に大事なのは、押し寄せるデータをいかに活用するか。大量のデータが効率的に収集できることを前提に業務を改革できれば、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は急速に進んでいくでしょう。

 次回は、ドローンを導入するにあたって考慮すべき点と準備すべき点について説明します。

吉井 太郎(よしい・たろう)

センシンロボティクス 執行役員 エバンジェリスト。ソニー、ソニーコミュニケーションネットワーク、IMJモバイルを経て、2008年より日本マイクロソフトにてゲーム機「Xbox」のマーケティングを担当。2015年よりグリーのヘルスケア領域における新規事業のサービス企画マネージャーを担当した。2016年5月より現職。