- Column
- Well-beingな社会に向けたロボットの創り方
Well-beingな社会に向けたロボットのあり方【第21回】
第1回からこれまでに20回、時間にして1年半以上に渡り、ロボティクスの過去、現在、そして、これからついて、筆者らや他社の事例などを交えながら論じてきた。最終回となる今回は、連載タイトルとした『Well-beingな社会に向けたロボット』について改めて考えてみたい。
2020年7月、本連載の第1回で筆者は、図1を挙げてロボットの価値を整理したうえで、次のように述べた。
「個々人によって異なるモティベーションやエンゲージメントなども考慮しながら、それぞれの組織や社会にとって、広義の意味での生産性を最適化・最大化するためにロボット技術を使っていく必要があるのだ。すなわち、個人のQoL(Quality of Life:生活の質)と経済合理性を両立できるようにテクノロジーを活用すべきではないだろうか。そうすることで、Well-being=より良い状態の社会を実現できると筆者は考えている」
ロボティクスの勢いは止まらない
この想いは、1年半を経た今現在においても変化はない。事実、コロナ禍となり「Withコロナ」と呼ばれる時期を迎えた今、例えば搬送ロボットは、飲食店をはじめ世間一般に普及したといえるほど身近な存在になった。業務用掃除ロボットも、提供者であるソフトバンクは累計出荷台数が1万台を超えたと発表した。このようにサービスロボットの事業も着実に成長する分野が複数出始めている。人手不足という文脈の中で、サービス領域における自動化は徹底的に追及されていくことになるであろう。
従来の大本流である産業用ロボットも、新型コロナによる影響から見事なV字回復を図っている。日本ロボット工業会によれば、2021年の産業用ロボットの年間受注額(会員ベース)は前年比約30%増の9405億円で過去最高になった。筆者自身も、新型コロナの影響や半導体を中心とした広範囲の材料不足・長納期化も身をもって感じているが、それ以上に生産性の向上や労働力の減少に対応するために、ロボットによる自動化ニーズは底堅いものになっている。
これらの例のように、「人がやるのがツライ、シンドイ」という業務など、自動化すべきものはドンドン自動化していけばよい。逆に「人がしたい」と思うことは、できる限り長い間、人ができるようにすることもまたロボティクスというテクノロジーが果たすべき使命である。
2021年度のグッドデザイン大賞に選ばれた『遠隔勤務来店が可能な「分身ロボットカフェDAWN ver.β」』はまさに、その使命を体現したともいえる。身体的、時間的、空間的な障害を取り除き、様々な制約から解放し、新しい雇用も創出したことは“スゴイ”の言葉に集約される。
筆者も分身ロボットカフェをランチを食べに訪れてみたが、お世辞抜きに美味しい食事をロボットや人による楽しい体験とともに味わえた。建築業界などで言われている「新3K(給与、休暇、希望)」という取り組みは、すべての業界で実現されるべき内容なのだ。