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- 新規事業開発でデジタル課題を発生させないための3条件
10→100フェーズ:事業拡大に伴うシステムの拡張限界と機能間調整問題を解決する

これまで、「0 → 1フェーズ」では顧客課題の発見と、それを解決する製品/サービスのセットを発見し、「1 → 10フェーズ」で一連のビジネスモデルに落とし込みました。それに続く「10 → 100フェーズ」は新規事業を成長させる段階です。ここまで来れば後は事業をひたすら成長させていくだけです。今回は、「10 → 100フェーズ」の事業拡大に伴うデジタル課題について考えていきます。
「10→100フェーズ」に入れば、立ち上げた事業を成長させるだけです。とは言っても、一般に一定以上の収益を挙げられるのは、大きなマーケットでも業界の1位~3位まで。小さなマーケットであれば1位以外は赤字すれすれになります。
この椅子取りゲームに勝つには、事業を素早く拡大しなければなりません。そのためには、事業の拡大に伴って増大するトラフィックへの対応はもとより、さまざまなセグメントのユーザーニーズを満たすための機能拡張にも迅速に対応しなければなりません(図1)。
さらに事業の成長フェーズに入れば、外部のプレーヤーにもマーケット規模や“勝ちパターン”が見えてきているので、それまでの競合他社に加え新規参入組が増えるだけに、競争が苛烈になっていきます。ここにデジタル課題が生まれます。
拡張したくてもシステムには拡張限界がある
まず、急速に増大するトラフィックへの対応を考えます。トラフィック増への対応は単純にサーバーを増強すれば良いと考えがちです。それも間違いではありませんが、見過ごしがちな落とし穴があります。拡張限界の問題です。
拡張限界とは、システムを構成する機器やプログラムのそれぞれが持つ「これ以上拡張できない」という限界点のことです。
たとえば、サーバーへのアクセスが集中した際、その負荷を分散させる「ロードバランサー」という装置があります。このロードバランサーが仕様上、5台のサーバーにしか接続できないとなれば、Webサービスの流入増を受けてサーバーを10台に増強しようとしても、ロードバランサーの拡張限界が5台のため、すぐ10台には増強できません(図2)。
この場合、ロードバランサー自体を変更する必要がありますが、サーバーを増やすよりもコストと時間がかかります。限界を知らずにサーバー増強にとりかかり、後から気づくこともあります。その場合はサーバー増強計画のやり直しになります。最初からロードバランサーの拡張限界を把握していれば、こうした無駄な時間を費やすことはありません。
最近はアジャイル開発の名の下、“場当たり的”なシステム開発を進めてきた結果、自社システムのどこに拡張限界があるのかを把握できていないことも珍しくありません。そういった場合は一刻も早く拡張限界を調査すべきです。