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「スマートシティ」と「スーパーシティ」の違い【第1回】

藤井 篤之、村井 遊(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2021年10月13日

「まるごと未来都市」の実現を目指すスーパーシティ

 多様化・複雑化する地域課題を先端技術を活用して解決するために、国主導で進められているのが「スーパーシティ構想」である。その背景には、世界中の都市設計の動きが、AI(人工知能)技術やビックデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるという方針で進められていたことがある。

 スーパーシティ構想では「まるごと未来都市」の実現を目指す。そのために、「エネルギーやモビリティといった個別分野にとどまることなく生活全般にわたること」「最先端デジタル技術を一時的に実証するのではなく暮らしに実装すること」「技術開発・供給側の目線ではなく住民目線で未来社会を前倒しすること」が掲げられている。

 都市の住民が参画し住民目線での未来社会を世界に先駆けて実現するための具体策としては、次の3つの取り組みを進めていく。

(1)生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供 :AIやビッグデータといった先端技術を活用し、行政・医療・教育など幅広い分野で利便性を向上させる

(2)複数分野間でのデータ連携 :複数分野の先端的サービス実現のために、データ連携基盤を通じて、様々なデータを連携・共有する

(3):大胆な規制改革 :先端的サービスを実現するための規制改革を同時・一体的・包括的に推進する

 これらの取り組みは、海外でも部分的には進められているものの、いまだ「まるごと未来都市」は実現されていない。これをいち早く実現することで、日本のプレゼンスを高めていこうという狙いも、スーパーシティ構想にはある。

規制の特例措置がスーパーシティ構想のポイントに

 スーパーシティ構想を後押しするために2020年9月、「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が施行された。国家戦略特区基本方針に基づいてスーパーシティ区域の指定基準を定めるとともに、スーパーシティ構想に関する住民の意向を反映・確認するための手続き、スーパーシティにおける規制の特例措置の要請などの内容が盛り込まれた。

 さらに国は、種々の施策にも取り組んでいる。スーパーシティを実現するための未来仕様の都市インフラの整備、最先端デジタル技術の活用とオープンな連携を可能にするAPI(Application Programming Interface)の提供、データの適性や管理とセキュリティの確保、未来都市を実現する国・自治体・民間で構成された強力な推進機関の設置などである。

 スーパーシティ構想を推進するうえで大きなポイントになるのが、規制の特例措置だ。国家戦略特区の法律を改正し、市民の暮らしをよくするために、あるべき未来都市の実現を想定し、領域横断での規制の特例措置を、市民の合意のもと地域主導でスピーディに実現することを目指す。

 日本の法制度は従来、新たなデジタル技術の登場を想定せずに作られてきた。例えば、旅館業法は「民泊」を禁止していた。宿泊者の安全や衛生を守るための規制だ。だが、デジタル技術を活用した民泊のためのマッチングアプリが登場し、世界中に民泊事業が普及し施設活用の新しいあり方が広まってくると、民泊の法規制は国内における普及を妨げた。

 その後、宿泊者の安全・衛生を引き続き守りながらも、市民のニーズに対応できるよう、国家戦略特区のなかで規制を見直し、一部地域において特例を活用した「特区民泊」を設定した。しかし、海外発やベンチャー企業発のデジタルサービスの進展を後追いする形になったことは否めない。

 特区制度における国の基本方針としては、スーパーシティを含めた特定地域に適用した規制の特例措置については、それによって社会的混乱を招かないのであれば、順次全国へと広げていくことが検討されている。こうした規制緩和の先鋒としての役割もスーパーシティは担っている。

 なお、2021年4月に締め切られた「スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募」には、全国から31の自治体(複数自治体による共同提案は1つとしてカウント)が応募した。2021年内にも、いくつかの自治体が選定され、スーパーシティ区域として正式に指定される見込みである。

 これからのスマーティシティ、その発展形としてのスーパーシティの行方を占ううえでも、スーパーシティ区域に指定される地域の取り組みや動向は注視したい。