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「スマートシティ」と「スーパーシティ」の違い【第1回】
今、改めて「スマートシティ」「スーパーシティ」が注目されている。2020年9月には「スーパーシティ構想」の実現を目指す「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が施行され、2021年内にも、いくつかの地方公共団体がスーパーシティに選定される見込みだ。一方でスマートシティについては、従来も各地で取り組まれてきた。スマートシティとスーパーシティは何が違うのか。それぞれの概念や課題を考えてみる。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進む中、地域開発などを手掛ける不動産会社や建設会社、移動手段を提供する鉄道会社や自動車メーカーなどが、街や社会の課題解決を掲げた取り組みを強めている。少子高齢化に伴う地域課題や、甚大化する自然災害への防災・減災のために、地方自治体などの取り組みも本格化している。
これらの取り組みは、「スマートシティ」あるいは「スーパーシティ」と呼ばれている。両者は同じなのか、異なるのか。それぞれの生い立ちや基本概念などを改めて確認しておきたい。
エネルギーマネジメント領域から始まったスマートシティ
「スマートシティ」は2008年頃に登場した概念である。デジタル技術を活用し、環境やエネルギーなど都市が抱える諸問題を解決するという考え方が基になっている。
当時は、電力消費を最適化するためのエネルギーマネジメントや、太陽光・風力など再生可能エネルギーによる二酸化炭素(CO2)排出量削減(カーボンニュートラル)を目指すグリーンテクノロジーが注目されていた。これらの仕組みを都市に適用することで問題解決を図ろうという流れからスタートしたのがスマートシティである。
その後、“スマート”の概念が拡張され、社会課題の範囲も、廃棄物の削減やリサイクルの推進、水道・ガス・道路・橋梁など都市インフラの維持などへ拡大。加えて、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)やMaaS(Mobility as a Service)といったモビリティとの融合、あるいは2011年3月の東日本大震災をきっかけにした災害対策などを包含した概念へと広がった。
さらに2012年から2015年頃にかけては、スマートシティは上記のようなマイナス面の課題解決よりも、社会にもたらすプラスの側面がクローズアップされるようになり始める。自治体サービスのデジタル化を通じた都市住民のQoL(Quality of Life:生活の質)の向上や、新たな産業の創出・振興、最新サービスの実証フィールドの提供などである(図1)。
スマートシティの単位・規模は千差万別だ。最も多いのは基礎自治体(市町村)を単位にしたスマートシティである。ほかに、シンガポールのように国家単位で取り組むスマートネーションや、数百世帯規模の街区単位、ビル単位など、さまざまな単位のスマートシティが存在する。
いずれのスマートシティにおいても重要なポイントは、デジタル技術の活用だ。私たちの日常生活が、もはやスマートフォンなしでは考えられないように、都市を取り巻く営みもデジタル技術の活用なくしては語れなくなっている。つまり、「デジタル技術の活用による都市戦略、街づくり」に関するすべての取り組みがスマートシティに含まれる。
このようにスマートシティの取り組みは、ここ十数年にわたり世界中で進められてきた。ただし、スマートシティの捉え方は世界各地で微妙に違っている。例えば米国はスマートシティを「ビジネス」として捉え、欧州は「社会制度」として捉えている。その中で日本は「技術」として捉える傾向があり、メーカーやITベンダーを中心に、技術ドリブンな取り組みが進められてきたと言える。
実際、日本においてスマートシティの取り組みが本格化したのは、経済産業省が2010年に実施した「スマートコミュニティ実証」からである。「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、横浜市、愛知県豊田市・京都府けいはんな学研都市・北九州市の4地域が選ばれた。
同実証では主に、地域やビル、および電気自動車(EV:Electric Vehicle)の蓄電池の活用を含めたエネルギーマネジメントの技術的な実験の場という意味合いが強かった。実証実験という制約上、その取り組みは限定的・単発的な領域にとどまり、社会の変革に結びつくような動きにまでは発展しなかった。
スマートシティの捉え方が三者三様であっても、スマートシティが発展し続けてきたことは間違いない。現在までに、多くのソリューションビジネスが登場し、社会制度としてのフレームワークが定義され、関連するデジタル技術が確立されている。
ちなみにアクセンチュアでは、「人々の暮らしをよくする」という原点を踏まえ、「人々が生活する範囲(生活圏)」を定義し、生活動線にある都市機能をデジタル技術でスマート化することが重要だと考えている。そこでは個々のスマートシティの独自性や固有の課題解決を考慮しながらも、各スマートシティに共通する部分については標準化を進めることも必要になる。