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「スマートシティ」と「スーパーシティ」の違い【第1回】

藤井 篤之、村井 遊(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2021年10月13日

デジタルデバイドの解消が課題

 スマートシティ/スーパーシティについて、否定的な意見や懐疑的な意見を唱える人たちが少なからず存在する。代表的な意見が、「住民の間のデジタルデバイド(情報格差)」の指摘だ。

 スマートシティを実現する各種アプリケーションを開発し、新しいサービスの提供を始めたとしても、すべての住民が等しく恩恵を受けられなければ意味がない。特に高齢者などの情報弱者にとって、「新しいサービスを利用するのに必要なスマホなどのデバイスを所有していない、使い慣れていない」ということは深刻な問題である。

 たしかに情報弱者に高齢者が多いのは事実だ。いわゆる“スマホ教室”などを通じて、サービスの使い方や操作方法のアドバイスやコーチングを地域としてサポートをしていく必要がある。

 だが高齢者がスマホを利用できないと決めつけるのは早計だ。根本的な問題は、高齢者がスマホを利用したくなるような魅力的なサービスがないことである。「孫とLINEで電話するためにスマホに変えた」という話をよく聞く。そうした高齢者にとって魅力的なサービスがなければ、スマホの使い方だけを懸命に教えても結局はスマホを触らなくなってしまうだろう。

 そもそも移動の自由度が低くなりがちな高齢者や、首都圏に比べて移動に高いコストがかかってしまう地方在住者にとって、デジタルとの相性は良いはずだ。高齢者や地方在住者を情報弱者と決めつけるのではなく、デジタルサービスのユーザとして真摯に向き合い、使ってもらえるようなサービスを提供することが、デジタルデバイドの解消には必要不可欠である。

 次回と次々回では、スマートシティの実施形態である「ブラウンフィールド型」と「グリーンフィールド型」について、国内外の事例を含めて解説する。

藤井 篤之(ふじい・しげゆき)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。

村井 遊(むらい・ゆう)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 コンサルタント。東京大学大学院 工学系研究科 システム創生学専攻 修了後、2011年総務省に入省。通信関連業務に従事した後、2014年に会津若松市に出向し同市のスマートシティプロジェクト「スマートシティ会津若松」の立ち上げに関わる。2019年アクセンチュアに入社し、スマートシティ会津若松に民間の立場から継続的に関与。SIP(内閣府)のリファレンスアーキテクチャ策定や、会津若松市のスーパーシティ提案書の全体取りまとめなどを実施。