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都市のデジタルツイン「Project PLATEAU」に見る3D都市モデルの可能性【第4回】

藤井 篤之、増田 暁仁(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2021年11月24日

データ整備の効率化やユースケースの拡充進む

 Project PLATEAUではこれまでに、全国56都市の大規模な3D都市モデルを整備された。しかし、日本全国を網羅しているわけではないし、日々刻々と変わりゆくデータの更新も必要である。

 そのため、3D都市モデルの整備・活用のムーブメントを、民間を含めたビジネス/テクニカル領域の幅広い人たちの間で惹起するための施策も積極的に展開している。国交省が立ち上げたポータルサイトでの取り組みの紹介や、実証成果や有識者インタビューといった記事による情報発信、ハッカソンイベントの開催や報道機関との情報交換などだ。

 2021年度からは、3D都市モデル利活用のユースケースを開発する取り組みを本格化させている。公共・自治体向けでは、「都市活動モニタリング」「防災」「まちづくり」の3つのテーマを掲げて、社会課題解決・価値創出のポテンシャルを検証するユースケースの開発が進められている。

 民間向けには業種別に7領域を抽出し、マネタイズの方法を含めた民間サービスとしての活用の可能性を探る取り組みが始まっている。7領域とは、小売り、ゲーミフィケーション、モビリティ、観光、エリアマネジメント、コミュニケーション、建設であり、各分野でAR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(Virtual Reality:仮想現実)などを活用するユースケースを開発する。

 ちなみにアクセンチュアは、Project PLATEAUの民間サービスの開発支援に関わっている。先進的なユースケース構築に向けた実証調査や業界横断の実証プロジェクトの立ち上げなどをサポートしている。

 そうした実証調査で得られた成果・ノウハウは、『3D都市モデルのユースケース開発マニュアル(民間活用編)』と『3D都市モデルのデータ変換マニュアル』としてまとめられている。3D都市モデルを活用したサービス開発を目指す民間事業者向け知見資料としてProject PLATEAUのサイト上で公開されている。

 Project PLATEAUでは2021年度以降の中長期的な展開として、「全体最適・市民参加型の機動的な都市インフラ開発・まちづくりの実現」を計画しているという。

 具体的には、(1)3D都市モデルの安価かつ持続可能な維持更新を実現できるデータ整備の効率化、(2)スマートシティの社会実装に向けた官民連携・市民参加型まちづくりといったユースケースの拡充、(3)各種都市情報を統合管理する都市計画GISと連携した都市空間データの高度化・デジタル化の推進、などに取り組む予定である。

 Project PLATEAUによって3D都市モデルが整備されたことを受け、今後は様々な領域での3D都市モデルの活用が期待される。

 次回は、3D都市モデルの活用例として、公共・自治体における実際の取り組みを詳しく紹介する。

藤井 篤之(ふじい・しげゆき)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。

増田 暁仁(ますだ・あきひと)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ テクノロジー戦略プラクティス マネジャー。立命館大学文学部人文学科地理学専攻卒業後、2014年アクセンチュア入社。先進技術を中心とした新規事業戦略立案、スマートシティ戦略策定実績多数。国土交通省の「Project PLATEAU」には担当マネジャーとして参画。