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3D都市モデルをビジネス活用する「ミラーワールド」が始動【第6回】
国内でもAR/VR技術の商用化やミラーワールドの実証が始まる
AR/VR技術を活用した事例は日本国内にも登場し始めている。例えば渋谷パルコでは、商業施設内の現実空間を仮想空間に拡張したARアートやAR広告のコンテンツ展示を実施している。
施設に用意されたゴーグルを装着するとバーチャルARアート空間を体験できる。屋上広場ではXRミュージックアートコンテンツを展示し、手持ちのスマホをかざすと空間上にアートが浮かび上がる。その実現には、日本発のスタートアップ企業Psychic VR Labが提供するXRクリエイティブプラットフォームの「STYLY」を使っている。
テナントとのコラボレーション企画により、グラフィックアーティストが制作した3Dモチーフも鑑賞できる。店舗で商品を購入した顧客だけが鑑賞できる特別なコンテンツが提供されるなど、単なる体験だけでなくマネタイズも実現されている。
さらにMESON・博報堂DYホールディングスは、Project PLATEAUの一環として「都市空間におけるAR/VRでのサイバー・フィジカル横断コミュニケーション」を渋谷神南エリアで実証している(図2)。
具体的には、仮想空間と現実世界を重ね合わせてミラーワールドを構築することで、遠隔地のVRユーザーと現実世界のARユーザーが、あたかも同じ空間を共有しているような体験を可能にする仕組みの価値を検証した。
実証では、ミラーワールド上の渋谷の空間に投稿されたコメントを第三者が閲覧できる機能や、リアルな街並をVRユーザーへ配信する機能が実装されている。都市空間をデジタルメディア化したユースケースであり、マーケティング領域での活用も期待できる。
ミラーワールドにおける3D都市モデルの価値
ミラーワールドのもう1つの活用例が、空間シミュレーションである。国土交通省が主導する「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」のように、バーチャル都市空間の建物に意味を付与したセマンティック(意味論)モデルならではの価値が発揮できる。
例えば、都市空間に存在する建物や街路といったオブジェクトに名称や用途、建設年といったメタ情報を付与すれば、仮想都市空間でのシミュレーションや表現において、その幅を広げ精度を高められる。
この価値を研究開発領域に活用したのが「デジタルサンドボックス」だ。仮想空間を使って影響範囲を検証・シミュレーションする。危険性が伴うこと、規制に抵触すること、特殊な天候条件時の必要性など、現実空間では実証し得ない都市空間での検証を、ミラーワールド内で同時多発かつ24時間365日、時間的制約のない実証実験ができる。
現実世界を正確に再現した3D都市モデルは、ミラーワールドなどのバーチャル都市空間を構築するためのベースデータとして活用できる。
ARやMR(Mixed Reality:複合現実)を用いた現実世界へのコンテンツ投影あるいは現実世界の情報をミラーワールドへ正確に反映させるには、双方の空間における位置合わせが必要だ。各地点における測量基準に沿って構築・再現されたセマンティックモデルである3D都市モデルなら正確性が担保できるため、強力なベースデータとしての価値が期待される。