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3D都市モデルをビジネス活用する「ミラーワールド」が始動【第6回】

藤井 篤之、増田 暁仁(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2021年12月22日

3D(3次元)都市モデルを作成する国土交通省主導の「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」。複数の民間企業がユースケース開発に取り組んでいる。前回は公共分野における“まちづくり”への応用を紹介した。今回は、仮想空間に新たな価値を想像する「メタバース」や、仮想空間と現実空間を同期させ新たな価値を創出する「ミラーワールド」などの観点も交えながら、民間ビジネスへの活用事例を紹介する。

 前回、3D(3次元)都市モデルの公共主導の活用例として、スマートシティ/スーパーシティなどの“まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)”の事例を紹介した。一方で民間主導による新たなビジネスを牽引する活用方法として期待される世界観が、仮想現実(VR:Virtual Reality)や拡張現実(AR:Argumented Reality)などのXR技術を活用した「メタバース」や「ミラーワールド」である。

GAFAMがXRで新たな主導権争い

 XRに関連する取り組みは世界中で始まっている。その動きを特に加速させているのが、米国のテックジャイアント企業群、いわゆる「GAFAM(Google、Amazon.com、Facebook(現Meta)、Apple、Microsoft)」だ。

 GAFAM各社は、センシング、ロボティクス、アナリティクスといった最新テクノロジーと巨大な資本力を用い、新たな主導権争いを演じている。

 なかでもFacebookは社名を「Meta」に変更した。その理由をCEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏は「メタバースの構築に注力するため」と語っている。同社は、メタバースを「人々をつなぐための次のフロンティア」に位置付け、2021年にはXR領域に1兆円規模の投資を進め、今後さらに加速させると宣言している。

 こうした動きに呼応するように、XRの市場規模は拡大の一途をたどっている。例えば、米IT調査会社のIDCは、AR/VR市場の年平均成長率(2020年から2024年)が54%になると予測している。

 その市場拡大を後押しする要因として挙げられるのが、高速・低遅延・多接続を実現する5G(第5世代移動通信システム)の普及と、「Google Glass」「Microsoft HoloLens」といったスマートグラスの高機能化・低価格化によるコンシューマライズだ。

 加えてAppleは、ゴーグル型デバイスの開発に注力している。海外メディアなどは、2023年までにリリースされると予想する。同社はこれまでに「iPhone」「iPad」のスマートフォン/タブレットに、レーザー光による空間の3Dスキャンを可能にするLiDAR(Light Detection And Ranging)機能を実装済みで、AR技術を組み合わせたコンテンツへの活用が始まっている。

 Appleは「AirPods」と「Apple Music」によりワイヤレスイヤホンを一般化させ、音楽を身にまとった生活をもたらした。同社が開発するゴーグル型デバイスが普及すれば、現実空間と仮想空間が融合した生活の一般化も現実味を帯びてくると思われるだけに、市場からの期待は非常に高い。

現実世界の建物や交通情報を仮想空間に再現

 ミラーワールドは、現実世界の事象を仮想空間に忠実に再現した世界(ワールド)である。米イェール大学の計算機科学者、デビッド・ゲランター氏が提唱した概念だ。製造や物流、建設、通信、エネルギー、医療など様々な業種・業務に点在するデジタルツインがつながり、仮想空間に現実世界の事象を反映させた写像世界を作り出す(図1)。

図1:ミラーワールドは仮想空間に点在するデジタルツインをつないだ世界

 ミラーワールドのビジネス分野での活用例を紹介する。