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スマートシティを支えるリファレンスアーキテクチャと「都市OS」【第7回】

藤井 篤之、谷本 哲郎(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年2月9日

都市OSを構成する8つの機能

 では、都市OSとはどのようなものなのか。都市OSとは、スマートシティの各種サービスや既存の行政情報システムなどの連携を可能にするオープンな共通データ連携基盤のことである。スマートシティリファレンスアーキテクチャでは、都市OSは以下の8種類の機能群で構成される(図2)。

図2:スマートシティリファレンスアーキテクチャが示す都市OSの構成要素(出所::「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における『スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー』)

機能1=サービス連携 :都市OSで動作する各種サービスをサービス間や他の都市OSのサービスと連携する
機能2=認証 :都市OSの利用者、都市OSと連携するアプリケーションや他システムに対する認証する
機能3=サービスマネジメント :都市OSと連携するサービスを適切に管理・運用する
機能4=データマネジメント :都市OSに保存・蓄積されるデータの管理、各所に分散されているデータを仲介する
機能5=アセットマネジメント :データの収集および他システムの登録・削除といったスマートシティアセットを制御する
機能6=外部データ連携 :スマートシティのアセットや他システムとのインターフェイスを管理し、データモデルやプロトコルの差異を吸収する
機能7=セキュリティ :都市OS内外の脅威から都市OSを防御する
機能8=運用 :都市OSの維持・発展に必要なシステム管理や管理プロセスを提供する

都市OSが持つ特徴は3つ

 これらの機能を持つ都市OSは、「相互運用」「データ流通」「拡張容易」の3つの特徴を持っている(図3)。

図3:都市OSの「3つの特徴」と各構成要素との関係(出所::「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における『スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー』)

特徴1:相互運用

 都市OSによってデータやサービスをつなぎ、相互運用ことができる。つなぎ方は大きく3つある。

方法1 :1つの都市OS内の異なるサービス間でデータを連携させる。それにより災害時に持病の薬を避難先に届けてもらうといったサービスの流れもあり得るだろう。

方法2 :ほかの都市OSとデータを連携させる。相互運用により複数の都市OSをまたいだサービスを提供できる。例えば、引っ越し時の手続きが簡単になったり、旅行先でパーソナライズされたお薦めを受けたりが可能になるだろう。

方法3 :都市OS間でサービスを連携させる。ある都市で優れたサービスが実現できれば、それをほかの都市への横展開が可能になる。例えば、会津若松市は「除雪車ナビ」という雪国の市民生活に役立つサービスを提供しているが、これを別の雪国の都市OSに横展開すれば、同様のサービスを低コスト・短期間で導入できるだろう。優れたスマートシティのサービスが各地に拡大していけば、1つの都市OSごとにかかる開発・運用コストを下げられ、その分、より地域特性に応じた新サービスの創出に注力することも可能になる。

 相互運用を担保するには、標準化団体が定めたAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)やデータモデルを積極的に採用し、どこからでもアクセスできるように外部に公開する仕組みを取り入れる必要がある。

特徴2:データ流通

 都市OS内外の多種多様なデータを仲介する機能を指す。都市OSが取り扱うデータには、(1)更新頻度が低く長期にわたって保存・参照される静的データ、(2)リアルタイムに生成される動的データ、(3)空間上の特定地点に関する位置情報を持つ地理空間データ、(4)個人の属性や行動に基づくパーソナルデータ、(5)データを効率的に検索・管理するためのメタデータなど、特性の異なる様々な種類が存在している。このような多種多様のデータを集約・仲介し、活用できるようにする。

特徴3:拡張容易

 都市OSでは、各種機能群から必要な機能を選び、それらを疎結合に組み合わせてシステムを構築できる「ビルディングブロック方式」を採用しているため、サービスへの影響を最小限にしながら更新できる。例えば、スモールスタートでサービスを構築し、地域の実情に合わせて機能を段階的に拡張することが可能になる。