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スマートシティを支えるリファレンスアーキテクチャと「都市OS」【第7回】

藤井 篤之、谷本 哲郎(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年2月9日

全国の様々な地域でスマートシティへの取り組みが始まっている。都市のサービスを効率的な利用に向けては、関連するデータを自治体の壁を越え、日本全国にまたがって円滑に流通させるための「共通データ連携基盤」が必要になってくる。その基盤として機能するのが「都市オペレーティングシステム(都市OS)」だ。都市OSには、スマートシティのデータやサービスをつなぐという重要な役割が期待されている。

 これまで行政のIT化は市町村ごとに取り組むことが多かった。サービスを提供するためのIT基盤もサイロ化された状態になっている。同じエリアにある自治体間でも、データやサービスの連携・統合、再利用、横展開が難しいうえに、情報セキュリティなども含めた保守・運用コストも自治体ごとに負担している。

 これを国全体で見れば、似たような自治体システムを運用するために何重にもコストがかかっていることになる。結果として、住民の利便性向上につながるサービスにコストをかけにくくなっている。全国各地でデータやデジタルに関する技術を活用し、地域が抱える課題を解決するスマートシティへの取り組みが進み始めている今、かつてのIT化時代の課題を繰り返してはならない。

 スマートシティへの取り組みにおいて、各地域がもつ強みや良さを生かしながら、それぞれの地域に合ったまちづくりを実現し、多様化する市民生活に対応できる行政サービスを提供するためには“スマートシティの標準化”こそが求められる。人口減少で税収減少が見込まれるなか、持続可能な行政サービスのあり方も問われている。

設計図を書くための「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」

 スマートシティ推進における課題を解決するために、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」事業で整備されたのが「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」だ(図1)。

図1:スマートシティリファレンスアーキテクチャの全体像(出所:「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における『スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー』)

 スマートシティ・リファレンス・アーキテクチャは、スマートシティを推進する各都市が、それぞれの地域の特性に合わせたスマートシティの“設計図”を描くための指針である。スマートシティを推進する際に考慮すべき内容が体系的に整理されている。これに沿って設計していけば、都市や地域全体のビジネスモデルを明確にし、一体感のある持続可能なスマートシティが構築できるというわけだ。

 さらに同アーキテクチャでは、地域特性やニーズに合った目的および戦略を明確に策定したうえで、利用者目線で個別サービスを設計するとともに、スマートシティ事業の推進組織やステークホルダーを整理してビジネスモデルを描く連携体制(都市マネジメント)の必要性などが述べられている。なかでも特に重要な役割を果たすものとして示されているのが「都市オペレーティングシステム(都市OS)」である。