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スマートシティを構成するスマートビルの現状【第9回】
警備・ロボット制御事例:ソフトバンク/東急不動産/三菱電機
東京都港区の竹芝エリアは国家戦略特区に指定されている。そこでソフトバンクと東急不動産が進める都市型スマートシティプロジェクトが「Smart City Takeshiba」だ。その拠点となる「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」には、スマートシティやスマートビルを実現する多種多様なソリューションが導入されている。
その1つが、AI(人工知能)防犯カメラの映像をリアルタイムに解析する仕組みだ。ビル入口やビル内、立入禁止区域に設置したAI防犯カメラの映像を解析処理し、予め登録してある要注意者や立入禁止区域に侵入した不審者を検知すれば、防災センターと警備スタッフにアプリを通じて即座に通知する。警備スタッフは現場に急行し迅速な対応が可能になるため、警備業務を担当するビル管理者の負担軽減とともに、ビル利用者の安全性向上にも寄与する。
オフィスの入退館ゲートは、顔写真を登録したワーカーであれば非接触で通過できる。マスクを着用していても認証できるほか、体温センサーを併設し発熱者を検知するとゲートを開かないなど感染症対策にも対応している。入退館者の監視や体温測定を担当する警備業務の省力化/無人化につながる。
三菱電機との協業では、入退館ゲートと連動して動作するエレベーター行先予報システムを実現している。入退館ゲートで顔認証したワーカーは、エレベーターの階数ボタンを押すことなく、自身が執務するオフィス階へ移動できる。
エレベーターは自走式サービスロボット(自律移動警備ロボット、運搬ロボット)とも連動する(図3)。従来はロボットの利用が難しかった階をまたぐ警備や運搬も可能になっている。
遠隔監視事例:イオンディライト
イオンディライトは、大手流通グループ、イオン傘下のファシリティマネジメント会社である。ビル管理業務の効率を高める遠隔監視サービスを提供している。商業施設などのビル内にセンサーを設置し、同社のカスタマーサポートセンター(CSC)から遠隔監視することで設備管理の省力化や無人化を図る(図4)。
CSCは全国8カ所にある。設備の稼働状況や異常を監視するためのシステムを集約したモニタリングステーションを設置している。異常発生時にはCSCが巡回スタッフへ初動対応を指示するとともに、タブレットとカメラを使って遠隔からサポートする。
2020年に、北海道のイオン店舗で実証実験と試験運用によって、遠隔モニタリング+支援の有効性を確認し、同店舗での常駐設備スタッフの無人化を実現した。2021年には全国で計130以上の店舗に拡大し、CSCからエリア全体を効率的に管理する「エリア管理」サービスを本番稼働させるとともに、同サービスの全国展開も図っている(イオンディライトのプレスリリース)。新築ビルに限らず、既存ビルのスマートビル化も可能であることを示す好例と言える。
次回は、テナント・ワーカー向けと設計・施工者向けのソリューションの事例を紹介するとともに、スマートビルが生み出す価値や今後の方向性について考えてみたい。
藤井 篤之(ふじい・しげゆき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。
山田 都照(やまだ・くにあき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ シニア・マネジャー。慶應義塾大学大学院理工学研究科卒業後、2010年アクセンチュア入社。主に、通信・ハイテク業界における新規事業戦略立案、アライアンス戦略策定、中長期事業戦略策定等、幅広く案件を手掛ける。
深川 翔平(ふかがわ・しょうへい)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジャー。同志社大学大学院 理工学研究科卒業後、2013年アクセンチュア入社。主に、通信・ハイテク・小売業界における新規事業戦略立案、中長期事業戦略策定、発注改革等、幅広く案件を手掛ける。