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進化するスマートビルが生み出す価値【第10回】

藤井 篤之、山田 都照、深川 翔平(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年4月6日

オフィスシェアリング事例:ソフトバンク

 「Smart City Takeshiba」においてソフトバンクは、スマートシティ/スマートビルに関する種々の実証実験に取り組んでいる。そうした中で2021年8月、オフィススペースを企業間でシェアするためのサービス「Smart Work Solution」の提供を開始した。スマートフォンから種々のビル設備の操作も可能にする。

 Smart Work Solutionでは、テナント企業やワーカーの働き方を支援するためのスマホ用アプリ「WorkOffice+(ワークオフィスプラス)」と、WorkOffice+の導入に必要な各種施工作業やコンサルティング、通信環境の構築などをパッケージにして提供する。した、テナント・ワーカー向けのソリューションサービスだ。

図2:ソフトバンクが提供するスマートビル用アプリケーション「WorkOffice+」の主な機能(出所:https://www.softbank.jp/biz/services/analytics/smartworksolution/

 WorkOffice+からは、ビル内の会議室やデスクの予約、利用開始/終了のチェックイン/チェックアウトなどが操作できる。テナント企業のワーカーであれば、自社の会議室やデスクの予約・利用状況をリアルタイムに確認できる。

 WorkOffice+をインストール済みのスマホを持って移動すれば、会議室やデスクがあるフロアへのエレベーター降車制限や、オフィスへの入室制限のロック解除ができる。これにより、自社の空き会議室やデスクを他のテナント企業に貸し出せ、オフィススペースの企業間シェアリングをセキュアに実現できるとする。

 Smart Work Solutionは、東京都港区にあるオフィスビル「プラスシフト乃木坂」(開発はサンフロンティア不動産)や、東京都千代田区のイオンディライト本社などが、機能を選択したうえで導入している。特にイオンディライトでは、WorkOffice+の導入が、新型コロナウイルス感染症を受けて策定された、来訪者・従業員の健康と安全に配慮した施設に対する国際的な認証制度「WELL Health-Safety Rating(WELL健康安全性評価)」の取得に貢献しているという。

街区で利用する共通認証ID事例:三菱地所

 三菱地所は、東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町エリアで数十棟に及ぶオフィスビルを管理している。それらをビル単位ではなく街区全体を対象にしたスマート化を進めている。その指針となる「三菱地所デジタルビジョン」を2021年6月に策定。同ビジョンの実現に向けた環境整備の一環として共通認証ID「Machi Pass」を開発した(図3)。

図3:三菱地所が街区のスマート化の指針として策定した「三菱地所デジタルビジョン」の概念(出所:「三菱地所デジタルビジョン」)

 Machi Passは、三菱地所グループが提供する各種Webサービスやモバイルアプリケーションにログインするための共通認証基盤である。1つの共通IDにより、複数のオンラインサービスや来場予約、オフィススペースなどリアル空間への入退室などが可能になる。

 既に丸の内エリアで働くワーカー向けWebサービス「update! MARUNOUCHI for workers」(三菱地所が提供)や、丸の内エリア内の店舗ポイントサービス「丸の内ポイントアプリ」(三菱地所プロパティマネジメントが提供)などで利用されている。

 2022年2月には、顔認証サービス連携基盤「Machi Pass FACE」も開発した。利用者は顔画像をMachi Passに登録すれば、複数ビルの入退館やサービスの利用などを顔認証で利用可能になる。三菱地所本社ビルでの実証と並行し、同社が運営する会員施設の入退室キーとしての利用を進めている。

 三菱地所はMachi Passを軸に、街を構成する、あらゆる外部関係者とつながるオープンなエコシステム「Mitsubishi Estate Local Open Network(MELON)」の構築を目指しているという。