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スマートシティ会津若松にみるヘルスケア分野の新サービス【第14回】

藤井 篤之、谷田部 緑(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年6月29日

取り組み1:PHRの基盤を介した情報連携

 健康寿命の増進に欠かせないのが、患者個人にひもづく医療・健康データ(PHR:Personal Health Record)を統合管理できる基盤の整備である。患者の医療・健康データは医療機関や薬局などが個別に管理している。それを一元的に管理・連携・共有できる基盤を構築・活用しようとするもので、各種サービス実現の前提になる。

 医療・健康データの連携は、地域医療サービスの高度化に極めて重要である。情報連携基盤を活用すれば、データをAI(人工知能)技術などを使って分析し、その結果を疾病の早期発見に役立てたり予防医療にシフトしたりができるようになる。

取り組み2:AIホームドクター

 AIホームドクターは、日々のバイタルデータや生活データを、AIシステムがモニタリングし疾病の早期発見や対処につなげるものだ。市民が利用しやすいよう、健康関連のIoTデバイスにサブスクリプションモデルを活用するなどして提供する。

 記録データ(ログ)と健康歴から、より望ましい行動変容を促したり、オンライン健康相談を積極的に勧めて連携したり、IoTデバイスで服薬モニタリングをしたりするなど、家庭で健康をサポートする役割を担う。

 将来的には、市民のライフステージを一気通貫に網羅したPHRを活用し、市民と医療・介護・自治体の連携を図り、予防医療や治療、予後管理を網羅しながら地域全体としての健康を実現する体系の構築を目指している。

取り組み3:ドクターインデックスと医療機関滞在15分プロジェクト

 患者体験を変革し、データとオンライン健康相談に基づいて、自宅静養やOTC薬での対応から医療機関での診察まで、医療的観点だけでなく、患者の利便性・体験の観点、医療費の観点からも最適な対応をリコメンドできるようにするための取り組みである。

 「ドクターインデックス」は、市民が医師の実績を知ったうえで納得できる医療サービスを主体的に選べるための仕組みだ。患者の氏名を伏せたうえで診療データを集計し、オンライン健康相談や受診を勧める際にAIシステムが、相談内容や地理的条件、混雑状況を加味して受診候補の医療機関を提示する。

 「医療機関滞在15分プロジェクト」は、待ち時間や通院の手間など患者の負担が大きい現在の医療を改善するための取り組みである。必要な医療を少ない負荷で受けられる体制を構築し、診察にかかる時間を15分程度で完了させることを目指している。

図2:「医療機関滞在15分プロジェクト」の流れ

 15分程度での完了に向けては、AI問診や遠隔診療を取り入れて不要な対面診療を避ける。加えて、MaaS(Mobility as a Service)との連携や自動決済、オンライン服薬指導なども組み合わせる。

取り組み4:薬局DX

 処方箋を含む健康情報を地域の医療機関や薬局で共有する仕組みを構築し、市民が必要な医薬品を迅速に入手・服用できるようにする。同時に、薬剤師にとっても、対物業務を削減し、より高度かつ対人の必須性が高い業務に注力できるようにする。

 処方薬の入手は現状、処方箋の対面受付が一般的で、病気により移動が困難でも薬局に足を運ばなければならない。待ち時間も長いという課題がある。患者の投薬情報は、それぞれの薬局が個別に管理し、情報連携や共有の手段は患者自身が管理する「お薬手帳」などに限られている。

 薬剤師に本来期待される役割は、患者が服用する薬物に関する情報の管理や記録、指導といった対人業務だ。医薬品の在庫管理や配送といった対物業務を薬局から分業・集約し、報酬のあり方を含めて変えていければ、対人業務へのシフトを促進できる。