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スマートシティを後押しする“地域協働型教育環境”の整備が急務に【第15回】

会津若松市が取り組む地域に貢献する人材の育成方法

藤井 篤之、工藤 祐太(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年7月27日

“地域協働型”プロジェクト「Flatフラっと学びサポート」を始動

 その一環として、AiCTコンソーシアムの有志が中心になって試験的に立ち上げたプロジェクトに「Flatフラっと学びサポート」がある。社会に開かれた学習環境の実現が目的だ。地域の子ども達を、教職員だけでなく、保護者や地域の人々が、それぞれのニーズが合致したタイミングに、気軽にサポートができる環境を創りたいとの願いから「Flatフラっと学びサポート」と名付けた(図1)。

図1:「Flatフラっと学びサポート」では共助サイクルの確立を目指す

 Flatフラっと学びサポートが最終的に目指すのは、(1)社会を生き抜く力を身につける必要がある子ども達と、(2)多様な知や経験の提供を要求される学校の教員、(3)地域に協力したい市民や企業を対象にした“三方良し”を実現できる仕組みの構築である。すなわち、教員や子ども達がサポートしてほしいタイミングに、地域の市民や企業がフレキシブルにサポートする“社会に開かれた協働型の学習環境”の実現を目指している。

 そのために、さまざまな経験を持つ地域の“先輩”が、学校という場を活用し、自身が持つ体験や専門知識を伝えることで、子ども達がリアルな社会や実践スキルを学べる環境を整備する(図2)。プロジェクトにはAiCTの入居企業18社が参加する。企業のサポートを受けるものの、企業人の立場ではなく1人の市民として活動に参加するところにも特徴がある。

図2:学校と地域の“協働型教育”に向けた協働モデルの構築

 Flatフラっと学びサポートの授業支援形態には3つのパターンがある。(1)学校へ直接出向く「リアル出前授業」、(2)特定の学校でリアルに授業を支援しながら、「GIGAスクール構想」で配備されたタブレット端末を使って複数学校を接続・配信する「リアル出前授業+オンライン配信」、(3)完全オンラインでの「オンライン出前授業(インタラクティブ)」だ。

 2020年8月から2021年度までに13回の授業支援を実施した。延べ1200人以上の子ども達が授業を受けている。いずれの授業もライブ感を大切にしつつ、デジタル技術を使った効率的な授業が実践された。なお会津若松市の全学校には、GIGAスクール構想により2021年4月をめどにタブレット端末が1人1台が配備済みである。

 実例として会津若松市内の中学校で実施された授業支援の内容を紹介する。2年生3クラスを対象にした授業のテーマは、「会津の宝リフレクション~東京と会津双方の良さを比較することで、地元の良さを再発見し、愛着を深める~」だ。3学期の技術家庭(情報活用能力の向上)と総合学習(プレゼンテーションスキルの向上・グループ学習の実践)の4コマ分の時間を活用した。

 1時間目はグループごとの役割分担の協議と会津の魅力についてディスカッションし、2時間目に東京と会津のギャップを検証し地元の魅力を再定義した。3時間目は発表会用資料の作成と練習、4時間目に「会津の宝リフレクション」を各グループが発表した。

 このうち2時間目の授業では、AiCT入居企業の東京オフィスに在籍するメンバーに対し、タブレット端末を通したインタビューを実施した。場所の制約に捉われずコミュニケーションが取れることを体感してもらうためだ。

 授業後に実施した生徒へのアンケート調査によれば、資料作成やリサーチなどタブレット端末の活用スキルの継続的な学習について意欲的な回答が多かった。プロジェクト型授業におけるグループワークの楽しさについても高い評価が得られている。

 こうしたFlatふらっと学びサポートの取り組みは、会津若松スマートシティ以外の地域への展開が始まっている。例えば、長野県の私立の高等学校では、理数科の1・2年生を対象に茅野市とアクセンチュアが協力してプロジェクト型授業を提供した。

 今後はスマートシティに取り組む自治体を中心に、授業支援の機会を増やしていく。地域間の連携機会を増やすことで、児童生徒同士、教員同士の交流を活発化させて交流の輪を拡げたいと考えている。