• Column
  • スマートシティのいろは

スマートシティを後押しする“地域協働型教育環境”の整備が急務に【第15回】

会津若松市が取り組む地域に貢献する人材の育成方法

藤井 篤之、工藤 祐太(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2022年7月27日

継続的な運営を支えるデジタルプラットフォームが必要に

 “社会に開かれた協働型の学習環境”の永続的なモデル構築へ向けては、無理なく運営できる協力体制に加え、授業の品質を担保する仕組みの構築が不可欠である。従来の電話やFAXなどを用いたスケジュール調整では限界がある。デジタルを活用したマッチングシステムの導入も必要だと考える。

 そのためFlatフラっと学びサポートでは、自身の時間と知恵を提供してくれる地域協力者の集約、授業サポートを希望する学校と地域協力者の隙間時間のマッチング、オンラインを活用して地域内外の学校をつないだ交流型授業の実践、スマートシティやSDGs(持続可能な開発目標)といった最先端テーマの教育効果を担保した専門性の高い授業コンテンツの提供などに取り組んでいる。

 加えて、サステナブル(持続可能)な運営モデルを実現するために、地域のつなぎ役を担うNPO(非営利団体)などのプレーヤーと効率的に運用するデジタルプラットフォームの検討も進めている(図3)。学校や教員と地域支援者のマッチング精度を高め、運用負荷の軽減を図る。

図3:運用を効率化するデジタルプラットフォーム

 加えてデジタルプラットフォームでは、地域支援者が積極的に関与できるようにするための地域ポイントの付与といったインセンティブや、参加企業への減税措置といった仕組みも検討している。自治体や教育委員会など行政の活用も促進し、学校間の連携強化や多様なニーズにも対応できる機能を取り入れる想定だ。

 次回は、会津若松市での子育て支援の取り組みをみながら、学校や医療機関など子どもが関わる、さまざまな機関が保持するデータを連携し、子どもや家庭環境に合わせた教育・子育て支援を目指す「子ども情報連携プラットフォーム」の構築について紹介する。

藤井 篤之(ふじい・しげゆき)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。

工藤 祐太(くどう・ゆうた)

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ビジネスコンサルティンググループ プリンシパル。2015年アクセンチュア入社。国や自治体のスマートシティ関連案件を中心に調査・コンサルティング業務に従事。主に、スマートシティをはじめとする地域経済活性化、地域における教育ICT活用の活性化、農林水産物を中心とした流通DX、地域の観光DX領域などを軸に活動を展開してきた。2019年9月に東京から福島県会津若松市に家族ごと拠点を移し、同市だけでなく長野県茅野市など地方創生に関わるプロジェクトへ多数参画している。