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デジタル技術で変わっていくコミュニティの姿【第24回】
変化2:住民同士の価値交換が広まる
スマート化が生んだ新たにコミュニティの1つに「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」がある。地域コミュニティにおいて飲食物を共有するための相互扶助プロジェクトの一種だ。主に地元企業や住民ボランティアの協力によって運営され、コミュニティ内で特に生活に困窮した住民が人の目を気にせず利用できるよう配慮されている。
コミュニティフリッジは、ドイツで2012年、Foodsharing(フードシェアリング)というグループが設置したのが世界初だとされる。その後、欧州・北米、さらにはアジアやオセアニアに広がった。日本では横浜市鶴見区の「コミュニティ冷蔵庫フリーゴ」や岡山市北区の「北長瀬コミュニティフリッジ」などがある(写真2)。
価値交換という意味で新しいコミュニティとして注目されているのが「People+Work Connect」だ。2020年、新型コロナウイルス感染症の広がりにより失業者が増えるなか、複数業界の主要企業グループが結成したジョブマッチングのプラットフォームである。従業員を解雇または一時帰休させている企業と、雇用の維持を支援する大手企業を結びつける。
同プラットフォームは、アクセンチュア、リンカーンフィナンシャルグループ、ServiceNow、ベライゾンのCHRO(最高人事責任者)が設計し、アクセンチュアが構築を担当した。
変化3:特定テーマのコミュニティが増える
デジタル技術を活用したオンラインコミュニティはインターネットの普及期から存在している。デジタルコミュニティの母集団が増加したことで特定テーマを扱うコミュニティが作りやすくなっている。同じ趣味を持つ近隣エリアのコミュニティメンバーが「ミートアップ」「オフ会」と称してリアルな交流会を開催する機会も増えている。
かつてのオンラインコミュニティは、同一車種のオーナーやクラシックカーの愛好家など、濃い趣味の人達がつながるものが多く、彼らがオフ会を開催していた。それが現在は、例えば開発エンジニアやプログラマーが集まるハッカソンや、語学など特定スキルの勉強会など、趣味だけでなく実務や実益に直結するテーマのコミュニティも増加の傾向にある。
変化4:利益循環型のコミュニティが生まれる
最新のデジタル技術のなかでも特に新しいコミュニティのあり方に影響を与えているのがNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)である。ブロックチェーン技術を基盤に作成された代替不可能なデジタルデータを指す。現在は主に、デジタルアートの資産価値の証明や、不正コピー・改ざんの防止に活用されている。NFTを、地域活性化を目的とした利益の獲得手段として取り入れるコミュニティが登場している。
例えば神奈川県社会人1部リーグ所属のサッカークラブ鎌倉インターナショナルFCは、「鎌倉デジタルコレクション」というNFTコンテンツを2021年から販売している。選手・監督や鎌倉の風景・文化財などの地域性・デザイン性のある写真やイラストなどをNFTのマーケットプレイス経由で販売する。初期販売および二次販売以降で得た利益の一部をユニセフに寄付するとともに、鎌倉の住民や指導者を対象にしたスポーツ教育に活用している。
同様の取り組みはJ1リーグ所属のプロサッカークラブ「浦和レッズ」や、プロ野球パシフィックリーグおよびリーグ所属の6球団などにも広がっている。