• Column
  • デジタルで変わる組織―離れていても強いチームを作る

市場機会を見つけ誰よりも早く行動する自律分散型組織を目指せ

コロナ禍でも成長する新たな組織構造をデザインする

DIGITAL X 編集部
2021年1月26日

青虫がサナギを経て蝶になるように生まれ変われる

 和田氏は、Scrum@Scaleによって、スクラムチームの取り組みが組織全体へと広がり組織変革がなされる過程を、米3Mや北米トヨタ、米国海軍、そして日本のLIXILなどの事例を挙げながら詳しく説明した。

 例えば3Mでは、素材の研究開発部門全体にスクラムを適用し、それまで130あった素材の開発プロジェクトをROI(投資対効果)に基づいて優先順位を付け、下位30%のプロジェクトをすべて廃止したという。

 結果としてリリースサイクルが劇的に早まり、顧客満足を高め、株価を過去最大にする原動力になった。廃止した30%のプロジェクトに携わっていた人材も「ビジネス価値が高いプロジェクトに所属し新しいスキルを身につけるなどで、組織へのエンゲージメントが上がりました」(和田氏)

 LIXILでは2019年度から、自律分散型組織を目指してScrum@Scaleを導入している。現在はIT部門の3割がスクラムを採用した段階にある。コロナ禍においても、スクラムオブスクラムで発生した障害についてEATが素早く解消することで、生産性や満足度は高まり続けているという。

 「組織変革は簡単ではありません。既存の組織に新しい手法を詰め込めば組織は疲弊してしまいます。しかし、リーダシップのもと新たな顧客価値を中心として、透明性が高く協働する組織文化を構築できれば、青虫がサナギを経て蝶になるように、これまでの組織とは比較にならないほどに、従業員のモチベーションが高い組織に生まれ変われると信じています」と和田氏は強調する。

図4:スクラムへの取り組みが組織を生まれ変わらせる

 スクラムコーチとしての和田氏は「スクラムを組織的に導入することで、熱意のあるチームから次々とイノベーションが生まれる社会にしていきたい」と力を込めた。