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DXのカギ握る「デジタルツイン」で実現できること【第1回】

草薙 昭彦(Cognite チーフソリューションアーキテクト 兼 CTO JAPAN)
2021年2月16日

新しいビジネスモデルの確立に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが活発になり、AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術やセンシング技術を活用したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の導入が進んでいます。そのなかで重要な役割を担うのが「デジタルツイン」です。今回は、デジタルツインとは何であり、何を実現できるのかを説明します。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈で「デジタルツイン」というキーワードを目にする機会が増えています。

 デジタルツインとは、以下のシステムを指します。

  「現実空間の工場や製造設備、製品、オペレーション、都市、さらには、そうした場所での活動をデジタル空間に再現し、リアルタイムに現実とデジタル世界を連携したシステム」

 さらに、次の概念を含む場合もあります。

  「デジタルツインを使ってシミュレーションを実施したり、その結果を現実世界での活動に生かしたりする」

Image by Gerd Altmann from Pixabay

デジタルツインはイノベーション推進の強力なツール

 本連載のテーマである「産業界のデジタルツイン」というと、日々の生活には直接関係のない概念のように聞こえます。ですがデジタルツイン自体は、私たちの日々の生活において、すでに自然な形で活用されています。

 例えば、みなさんも飲食店や美容院などを訪れたい時に、地図アプリの「Google Map」を使って店舗の位置や、周辺情報を確認したことはないでしょうか。これは、現実世界の道路や店舗がGoogle Mapというアプリケーションの中に再現されたデジタルツインです。

 またGoogle Mapには写真から合成された風景を見渡したり道の上を歩き回ったりできる機能があります。これもデジタルツインを活用した表現方法の1つです。

 上記の定義から分かるように、デジタルツインは、様々なモノやコトをデジタルの世界で可視化する能力を備え、機器の運転の最適化や故障・不具合の事前予測といったユースケースに活用できます。

 そのためデジタルツインは、産業のイノベーションを推進するための強力なツールの1つとして採用されるケースが増えています。デジタルツインの概念は一般的になりつつありますが、技術の進歩により、特に製造業や、電力・石油・ガスといったエネルギー産業などにおいて、その可能性を広げています。

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