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“人間中心”の地域DXが目指すべきもの【第2回】

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括)
2021年3月25日

ステージ3:人と人がつながる“あるべき”DX社会を目指す

 最終モデルとしては、相互に信頼できる関係を構築し、その上で新たな民主主義社会を創り上げていくことになるだろう。この段階では、個人情報保護の問題やセキュリティ対策、デジタルデバイドの問題も解消しているだろう。それぞれの生活圏のすべてが連携した一極構造型の「新しい公共」が始まっていることを想定する。

 図2の日本地図は、市民の普段の生活範囲をデータ分析から導き出し、275のデジタル生活圏として分けたものである。スマートシティは、これら生活圏のレベルで取り組まれるべきだと考えている。

図2:市民の生活範囲から導いた275のデジタル生活圏

 かつて、東京都のある区からスマートシティ計画の相談を受けたことがあるが、その際は、こうした生活圏を念頭に置いた計画を提案した。

 筆者は東日本大震災以前は、東京・世田谷区に住んでいた。アクセンチュアの本社は港区にあり、通院していた病院は中央区にあり、生活上必要なもののほとんどを渋谷区内で購入していたと思う。つまり筆者の生活圏は4区にまたがっており、私のデータも複数の自治体にまたがって存在していることになる。区ごとにスマートシティに取り組んでも個人が得られる恩恵は限定的ということだ。

 一方で現在、新型コロナウイルス対策で首都圏1都3県が連携して対策を打っている。しかし例えば、千葉県の房総半島の先から東京まで通勤・通学している人が、どれほどいるものなのだろうか。生活圏の視点で市民の行動を把握せずに一律的な制限をかけることの有効性には疑問を持たざるを得ない。

 海外ではデンマークやエストニアのように、ほぼ全国民をコネクテッドにするという先進的取り組みが成就している国もある。だが、オプトインに踏み込んでいる国はまだない。日本が先陣を切ってオプトイン社会を構築することで、世界に日本のDXモデルを示せるのではないだろうか。まさに、これこそが人間中心のDXだと考える。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同代表。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、オープン系ERPや、ECソリューション、開発生産性向上のためのフレームワーク策定および各事業の経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて設立した福島イノベーションセンター(現アクセンチュア・イノベーションセンター福島)のセンター長に就任した。

現在は、震災復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中からの機能分散配置を提唱し、会津若松市をデジタルトランスフォーメンション実証の場に位置づけ先端企業集積を実現。会津で実証したモデルを「地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)」として他地域へ展開し、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。